皆さま、こんにちは。大田区議会議員の佐藤なおみです。
秋風が心地よい季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。日頃より区政に対しまして、温かいご支援とご協力を賜り、心より感謝申し上げます。
さて、皆さまは「青少対(せいしょうたい)」という言葉を耳にしたことがありますでしょうか?
正式名称を「青少年対策地区委員会」と言い、私たちの住む雪谷地区にももちろん「青少年対策雪谷地区委員会」が存在します。地域のイベントなどでその名前を見かけたり、ピンクのポロシャツを着て活動している姿をみかけたこともあるのではないでしょうか。
「そもそも、どんな人たちが集まっているの?」
そんな風に思われる方も少なくないのではないでしょうか。実は、何を隠そう私の夫もこの青少対のメンバーであり、私自身もその活動に触れる機会が多くあります。子どもたちの健やかな成長を願い、地域のために日々汗を流してくださっているこの組織のことを、もっと多くの皆さまに知っていただきたい。
そんな想いから、今回はこの「青少対」について、少し詳しく、そして私の個人的な体験も交えながらご紹介させていただきたいと思います。
青少年対策雪谷地区委員会(青少対)とは?~「地域の子どもは地域で育てる」を支える公的な仕組み~
まず、「青少対とは何か?」と問われれば、その最も重要な特徴は、地域住民の力と行政が一体となった公的な組織である、という点にあります。
委員の方々は、大田区の取り組みの一環として、区長から委嘱(いしょく)または任命された委員の方々によって構成されています。つまり、その活動は個人の善意だけに依存するものではなく、区としてもしっかりと位置づけた、責任ある役割を担っていただいているのです。
では、どのような方々が委員になるのでしょうか。実は、委員になるためにはいくつかの公的なルートがあります。例えば、地域の各小・中学校のPTA会長や、各町会・自治会長からのご推薦を受けた方、そして民生委員・児童委員や青少年指導員といった、日頃から地域活動に深く関わっておられる方々がその中心となります。このように、地域を代表する様々な立場の方々が集まることで、多様な視点から子どもたちの育成を考えることができる体制が作られています。
委員の方々は区長の任命を受けた公的な立場ではありますが、区の職員というわけではありません。お一人おひとりが、ご自身の仕事や家庭を持ちながら、貴重な時間を割いて活動にあたっておられます。その活動は、報酬を目的としない、まさに「地域への奉仕の精神」に支えられたものです。
また、区の取り組みとして、活動に必要な予算が配分されていることも大きな特徴です。これにより、後ほどご紹介する「夏の集い」や「スポーツ大会」といった、子どもたちのための大規模なイベントも安定して開催することができます。
つまり青少対は、「地域住民の熱意や自主性」と「行政の公的な後ろ盾(任命・予算)」が一体となった、非常にユニークで力強い組織なのです。「地域の子どもは、地域で育てる」という理念を、絵に描いた餅に終わらせないための、素晴らしい仕組みと言えるでしょう。
青少対のなりたちと背景~時代と共に歩む子どもたちのサポーター~
では、このような組織はいつ、なぜ生まれたのでしょうか。その歴史を紐解くと、戦後の社会復興期にまで遡ります。
戦後の混乱期、そしてその後の高度経済成長期。日本社会が大きく変化する中で、子どもたちを取り巻く環境もまた、目まぐるしく変わっていきました。家庭環境の変化、都市部への人口集中、価値観の多様化など、様々な要因が絡み合い、青少年の非行が社会問題としてクローズアップされるようになりました。
こうした状況を憂いた国や自治体、そして何よりも地域を愛する大人たちが、「子どもたちを正しく導き、健やかに成長できる環境を地域社会全体で作り上げなければならない」と立ち上がったのが、青少年対策地区委員会の始まりです。
大田区においても、昭和30年代から40年代にかけて各地区で青少対が組織されていきました。私たちの雪谷地区委員会もまた、そうした時代の要請の中で、先人たちの熱い想いによって産声を上げたのです。
設立当初は、非行防止や街頭での補導活動が中心だったかもしれません。しかし、時代は移り変わり、子どもたちが直面する課題も変化してきました。いじめ、不登校、インターネットやSNSとの関わり方、そして希薄化する地域とのつながり。
青少対は、そうした時代の変化に柔軟に対応しながら、常にその時代の子どもたちにとって何が必要かを考え、活動内容を進化させてきた歴史があります。変わらないのは、「子どもたちを想う地域の愛情」ただ一つなのです。
その組織と位置づけ~地域連携の「ハブ」となる存在~
青少対は、区長の任命を受けた委員で構成される公的な側面を持つと同時に、その運営の主体はあくまで地域住民です。行政と住民が対等なパートナーシップで成り立っているこの「官民一体」の体制こそが、青少対の強みです。
そして、青少対の最も重要な役割の一つが、地域連携の「ハブ(拠点)」機能です。
子どもたちの育成には、実に多くの組織や人々が関わっています。
PTA
町会・自治会
民生委員・児童委員
地域のスポーツ団体
保護司
警察・消防
これらの組織は、それぞれが子どもたちのために素晴らしい活動をしていますが、個別に動いているだけでは、その力は分散してしまいます。先に述べた通り、青少対にはこうした各組織の代表者や関係者が委員として参加しています。
区長に任命された公的な立場を持つ委員が集まることで、この「ハブ」は強固な信頼の基盤を持つことになります。各組織を横断的につなぎ、情報を共有し、一体となって子どもたちの育成に取り組むための、まさに公式なプラットフォームとして機能しているのです。
例えば、学校で何か課題が持ち上がった時、PTAだけ、先生だけでは解決が難しい問題も、青少対という場を通じて地域の様々な大人の知恵や力を借りることができます。まさに、地域全体の力を結集させる「要」の存在と言えるでしょう。
青少対が目指すもの~子どもたちの未来を守る3つの柱~
青少対の活動は多岐にわたりますが、その目的は大きく3つの柱に集約されます。
1. 青少年の「健全育成」
これは、子どもたちが心身ともに健やかに、そして豊かに成長していくための土台を作る活動です。スポーツ大会や文化活動、自然体験活動などを企画・運営し、子どもたちに成功体験や協調性、郷土愛を育む機会を提供します。学校や家庭だけでは体験できないような、地域ならではの多様な経験を通じて、子どもたちの可能性の芽を伸ばしていくことを目指します。
2. 青少年の「非行防止」
子どもたちが事件や事故に巻き込まれたり、道を踏み外したりすることなく、安全・安心に暮らせる環境を作る活動です。後ほど詳しくご紹介する「愛のパトロール」などを通じて、危険な場所はないか、子どもたちが不安な思いをしていないか、地域の大人の目で見守ります。あいさつ運動なども、顔の見える関係を築くことで、犯罪の抑止力となる大切な活動です。
3. 青少年を取り巻く「環境浄化」
これは、子どもたちの成長に悪影響を及ぼすような社会環境を改善していく活動です。例えば、通学路の安全点検や、有害図書の自動販売機がないかのチェック、地域の清掃活動なども含まれます。物理的な環境だけでなく、子どもたちが安心して過ごせる、温かい雰囲気の地域社会を醸成していくことも、この環境浄化の大きな目的です。
この3つの柱は、それぞれが独立しているのではなく、相互に深く関連し合っています。楽しいイベント(健全育成)に参加することで地域への愛着が湧き、それが非行に走る気持ちを抑制し(非行防止)、地域全体が明るくなる(環境浄化)…というように、全ての活動が子どもたちの未来を守るという一つの目標につながっているのです。
現在の運営と具体的な活動内容~夫も汗を流した「夏の集い」より~
さて、ここからは青少対雪谷地区委員会の具体的な活動について、私の体験も交えてご紹介したいと思います。
青少対の活動は、年間を通じて計画的に行われています。毎月の定例会で活動計画を話し合い、各イベントに向けて部会を組織して準備を進めていきます。
年間を通した主な活動には、以下のようなものがあります。
春のガーデンパーティ:新緑の季節に、地域の皆さまと共に楽しむ交流イベントです。
洗足池でのホタル鑑賞会:初夏の風物詩として、幻想的なホタルの光を親子で鑑賞します。
秋の地区運動会:各町会・自治会が一体となって参加する、地域の一大イベントです。子どもからお年寄りまで、多くの住民が交流を深めます。
広報紙「青少年対策だより」の発行:地域の皆さまへの活動報告や情報発信。
各種スポーツ大会:野球大会やサッカー大会など、子どもたちが主役の大会を主催。
そして、こうした活動の中でも特に大きなイベントが、今年の夏に行われた「夏の集い」でした。
このイベントには、運営側の一員として参加している夫はもちろんのこと、子どもたちも本当に楽しいと思える集いだったようです。
会場となったのは、緑豊かな地域の施設。集まったたくさんの子どもたちの目は、期待に満ててキラキラと輝いていました。青少対の委員の皆さんは、お揃いのピンクのポロシャツを着て、受付や誘導、各プログラムの進行役として、朝から忙しそうに、しかし本当に楽しそうに立ち働いていらっしゃいました。
プログラムの目玉の一つが、「飯盒炊爨(はんごうすいさん)」です。夫も小学生の時以来の体験でしたが、これがなかなか難しかったと!薪の組み方、火加減の調整など、子どもたちが困ったときは各グループについているジュニアリーダーの方が手助けしてくれますが、それでも解決しない問題は委員の方々が丁寧に指導してくださるそうです。
夫も、慣れない手つきの子どもたちに「こうやって薪を組むと空気が入ってよく燃えるんだよ」「お米は最初にお水にしっかり浸しておくのがコツだよ」と、額に汗しながら教えたそうです。
煙に巻かれて目をしょぼしょぼさせながら、うちわで必死に火をおこす子どもたち。最初は戸惑っていた子も、グループの仲間と協力するうちにどんどん積極的になっていきます。そして、蒸らし終わった飯盒の蓋を開けた瞬間の、あのもくもくと立ち上る湯気と炊き立てのご飯の香り!
みんなで炊いたご飯で作ったカレーの味は、きっと格別だったことでしょう。「自分たちの力でできた!」という達成感に満ちた子どもたちの笑顔は、何物にも代えがたい宝物だと感じました。
その後も、各種レクリエーションで子どもたちは歓声を上げながら思いきり体を動かしていました。こうした遊びの一つひとつにも、子どもたちを楽しませよう、夏の思い出を作ってあげようという、委員の皆さんの温かい愛情が込められているのが伝わってきます。
そして、日が暮れてから始まったのが「キャンプファイヤー」です。
パチパチと音を立てて燃え上がる炎を、みんなで輪になって囲む。その幻想的な光景の中で、歌を歌ったり、ゲームをしたり…。炎の光が、子どもたちの顔だけでなく、それを見守る私たち大人の顔も優しく照らし出した様子が目に浮かびます。
家庭や学校とは違う、地域という大きなコミュニティの中で、子どもも大人も一体となる。
そんな不思議な一体感が、そこにはあったのではないでしょうか。
こうした楽しい時間の裏側で、青少対とジュニアリーダーの皆さんがどれほど多くの準備と労力を費やしてくださっているか。企画立案から、備品の準備、当日の進行、そして後片付けまで。子どもたちの笑顔のために、まさに「縁の下の力持ち」として、黒子に徹してくださっている。その姿を夫を通してですが間近で感じ、改めて頭が下がる思いでした。
まとめ~未来へつなぐ地域の輪~
今回は、青少年対策雪谷地区委員会、通称「青少対」についてご紹介させていただきました。
青少対は、単なるイベント開催団体ではありません。
「地域の子どもは、地域で育てる」
この理念のもと、区長の任命を受けた委員の方々が、学校・家庭・地域が連携する「ハブ」となり、子どもたちの「健全育成」「非行防止」「環境浄化」という大きな目標に向かって、日々活動を続けてくださっている尊い組織です。
私たちが日々、安心してこの雪谷地区で暮らせているのも、こうした公的な責任と地域への愛情を併せ持った方々が、陰になり日向になり、地域の子どもたちを見守り、温かいコミュニティを育んでくださっているおかげなのだと、改めて実感しています。
この記事を読んで、少しでも青少対の活動にご興味を持っていただけたら幸いです。そして、もし街でピンクのポロシャツを着た委員の方々を見かけたら、「いつもありがとうございます」と心の中で呟いていただけたら、とても嬉しく思います。
もちろん、活動に興味のある方は、雪谷特別出張所などを通じてお声がけいただければ、いつでも歓迎してくださるはずです。
私、佐藤なおみも、一人の議員として、そしてこの地域に暮らす一人の親として、青少対の皆さまの活動に心からの敬意と感謝を申し上げるとともに、今後もその活動を応援してまいります。
地域の大人が手を取り合って子どもたちを育むこの素晴らしい「地域の輪」を、未来へとしっかりとつないでいくために。
長文になりましたが、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
季節の変わり目、皆さまもどうぞご自愛ください。
大田区議会議員 佐藤 なおみ
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