皆様、こんにちは。大田区議会議員の佐藤なおみです。
近年、毎年のように日本のどこかで「数十年に一度」「観測史上初」といった豪雨災害が発生しています。テレビの画面越しに濁流がまちを飲み込み、人々が不安な表情で避難所に身を寄せる姿をご覧になり、「もしこれが大田区で起きたら」と不安を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
私の事務所にも区民の皆様から多くのお声が寄せられます。
区が配布したハザードマップを見たが自宅が浸水エリアに入っていて恐ろしい
多摩川が氾濫したら本当に避難できるのか
こうした水害に関するご相談や不安のお声です。大田区は東に東京湾、南に多摩川を臨みます。区内には呑川(のみがわ)をはじめとする中小河川が流れる「水」と非常に密接な関わりを持つまちです。その「水の恵み」は時に私たちに「水の脅威」として牙をむく可能性があります。
私たち政治の最大の責務は区民の皆様の生命と財産を守ることです。今日は大田区が抱える水害リスクの「現実」と区が現在どのような「対策」を進めているのか。そして、それでもなお残されている「課題」は何か。皆様と情報を共有し一緒に考えるためにこのテーマを詳しく掘り下げてみたいと思います。
第1章:大田区は水害に弱いのか?
まず皆様の疑問である「大田区は水害に弱いのか?」という問いにお答えしなくてはなりません。結論から申し上げますと「はい、残念ながら大田区は複数の水害リスクを同時に抱える、水害に対して備えが不可欠な地域」と言わざるを得ません。これは大田区の「地形」と「地理的条件」に起因しており、大田区の水害リスクは大きく分けて3種類あります。
1. 洪水(外水氾濫)のリスク
これは大雨によって区の南側を流れる「多摩川」の水かさが増し、堤防を越えたり決壊したりしてまちが水浸しになるリスクです。大田区が公表している「洪水ハザードマップ」はこの多摩川が「想定最大規模」(2日間で総雨量551mm)の大雨によって氾濫した場合のシミュレーションに基づいています。
この想定では多摩川沿いの鵜の木、矢口、下丸子、田園調布の一部地域から、六郷、西六郷、東六郷、南六郷、羽田地域に至るまで広範囲で浸水が想定されています。場所によっては浸水の深さが3メートルから5メートル、建物の2階部分まで水に浸かる可能性が示されています。
2. 内水氾濫のリスク
これは「ゲリラ豪雨」のように短時間で局地的に猛烈な雨が降った場合、下水道や側溝の排水能力が追いつかずマンホールや排水溝から水が溢れ出し道路や住宅が浸水するリスクです。大田区は西側の台地(馬込台、久が原台など)と東側・南側の低地(多摩川沿岸部、蒲田・大森周辺、臨海部)が混在し高低差がはっきりしています。
台地に降った雨は一気に低地へと流れ込みます。特に蒲田駅周辺や大森駅東口周辺などの低地部では過去にもこの内水氾濫による道路冠水や床下浸水が発生しています。
3. 高潮のリスク
これは非常に強い台風が東京湾を通過する際、海面が異常に上昇し海水が防潮堤を越えて陸地に流れ込むリスクです。大田区の東側、羽田地域、大森東地域、平和島、昭和島、京浜島、大森ふるさとの浜辺公園周辺などは東京湾に面しています。
区の「高潮ハザードマップ」では過去最強クラスの「伊勢湾台風」が東京湾を直撃した場合を想定しています。この場合、臨海部を中心に広範囲で浸水し場所によっては5メートル以上の深刻な被害が想定されています。このように大田区は「多摩川の洪水」「ゲリラ豪雨による内水氾濫」「台風による高潮」という3つの異なる水害リスクに同時に直面しているのです。
まずは区から全戸配布されている「大田区洪水・高潮ハザードマップ」を今一度お手元にご用意ください。ご自身の自宅、職場、お子様の学校がどのリスクにさらされているのかをご確認いただくことが防災の第一歩となります。
第2章:大田区の過去の水害事例
「今まで大丈夫だったから」というお声を時折耳にします。しかし私たちは過去の教訓に学ばなければなりません。大田区は歴史的に何度も水害に見舞われてきました。
キティ台風(1949年・昭和24年)
戦後間もない日本を襲ったこの台風は、大田区に壊滅的な「高潮」被害をもたらしました。当時の羽田町、大森町、入新井町などの臨海部は高潮によって広範囲が浸水し、多くの家屋が流失・全半壊する甚大な被害を受けました。現在の強固な防潮堤はこの時の痛ましい教訓から整備が進められたものです。
狩野川台風(1958年・昭和33年)
この台風では多摩川が未曾有の大増水となりました。上流の狛江市で堤防が決壊し甚大な被害が出ましたが、大田区側でも堤防のすぐそこまで濁流が迫り、いつ決壊してもおかしくないまさに危機一髪の状況でした。
近年のゲリラ豪雨
皆様の記憶に新しいのはやはり局地的な集中豪雨による被害ではないでしょうか。例えば2014年(平成26年)8月の集中豪雨では1時間に100mmを超える猛烈な雨が観測され、蒲田駅周辺や大森駅東口などで大規模な道路冠水が発生しました。下水道の排水能力を降雨量が完全に上回ってしまったのです。
東日本台風(2019年・令和元年)
そして近年の水害対策の転換点となったのがこの台風19号です。大田区では多摩川の水位が観測史上最高レベルに達しました。田園調布地区の一部では多摩川の水位が上昇した影響で排水が追いつかず「内水氾濫」による浸水被害が発生しました。
区内全域に「避難勧告(当時)」が発令され、多くの区民が小中学校などの避難所に身を寄せ不安な夜を過ごされました。「あの時もし雨がもう少し長く降り続いていたら堤防が決壊していたかもしれない」この恐怖は多摩川沿いにお住まいの方々の共通の記憶として今も鮮明に残っています。過去に起きたことは未来も必ず起きる可能性があります。そして近年の気候変動はその頻度と規模を私たちの「想定」を超えるものへと変えつつあるのです。
第3章:大田区の対策(ハードとソフト)
こうした脅威に対し大田区(および国・東京都)はもちろん手をこまねいているわけではありません。「ハード(施設整備)」と「ソフト(避難・情報)」の両面から対策を進めています。
ハード対策(施設整備)
1.多摩川(国管理)の対策:
国の管轄である多摩川については、大田区からも国に対し堤防の強化・かさ上げそして「スーパー堤防」の整備を継続的に強く要望しています。田園調布地区など一部では整備が進んでいますが区内全域の安全度を高めるためさらなる促進が必要です。
2.中小河川(都管理)の対策:
区内を流れる呑川、内川、丸子川などは東京都の管轄です。護岸の整備や川底の土砂を取り除く「浚渫(しゅんせつ)」作業など氾濫を防ぐための改修工事が進められています。
3.下水道(都・区)の対策:
内水氾濫(ゲリラ豪雨)対策の切り札です。東京都は幹線下水道の整備や大雨の際に一時的に雨水を溜め込む「調節池」(例:環状七号線地下広域調節池など)の整備を進めています。大田区としても区が管理する下水道管の能力強化や区立の小中学校の校庭などを利用した「雨水貯留浸透施設」の設置を進め、少しでも多くの雨水を地下に浸透させ下水道への負担を減らす努力をしています。
4.高潮(都・区)の対策:
東京湾沿いにはキティ台風の教訓から強固な「海岸保全施設(防潮堤、水門など)」が整備されています。これらの施設が老朽化していないか、また大地震が来ても耐えられるように「耐震化」を進めることが重要であり現在も継続して工事が行われています。
ソフト対策(情報伝達・避難)
1.ハザードマップの全戸配布と周知:
まずは「知っていただく」ことが全ての始まりです。区は洪水・高潮・内水のハザードマップを定期的に更新し全戸に配布しています。ホームページでも詳細な地図が確認できます。
2.多様な情報伝達手段の確保:
いざという時、確実に情報を届けるため防災行政無線(屋外スピーカー)だけでなく「おおた防災アプリ」、緊急速報メール、大田区公式LINE、X(旧Twitter)など複数の手段で避難情報などを発信します。
3.避難所の開設・運営:
区立の小中学校などを「避難所」として指定しています。コロナ禍を経て避難所での感染症対策を含めた運営訓練も実施されています。
4.「マイ・タイムライン」作成の推奨:
「いつ」「誰が」「何をして」「どこへ避難するか」をご家庭ごとに時系列で決めておく「マイ・タイムライン」の作成を区は推奨しています。
第4章:残された課題と問題点(議員としての視点)
ここまで行政の対策をご紹介しましたが、私は現状の対策で「万全」だとは到底考えておりません。議員として区民の皆様の命を守る立場から強く指摘しなければならない「課題」が山積しています。
① ハード整備が「想定を超える豪雨」に追いついていない
最大の課題です。下水道や調節池の整備は莫大な予算と長い年月がかかります。しかし気候変動による豪雨の激甚化は私たちの想像を上回るスピードで進んでいます。現在の整備計画(例えば「1時間に50mmの雨に対応」など)が、果たして10年後20年後の「未来の豪雨」に対応できるのか。常に計画を見直しスピードアップを図る必要があります。
② 「広域避難」のリアリティの欠如
洪水ハザードマップを見ると多摩川沿いの低地にお住まいの方には「広域避難(区外や区内の台地部など安全な場所への早期の立ち退き避難)」が求められています。しかしこれは言うほど簡単ではありません。
高齢者や障害者、乳幼児を連れた家庭はどうやって遠くまで避難するのか?
親戚や知人宅など避難先を自分で確保できない人はどうするのか?
こうした「避難行動要支援者」の方々を含め全ての区民が安全に避難できるための、より具体的で実効性のある計画がまだ不十分であると私は感じています。自助努力だけに任せてはならない問題です。
③ 「情報が届かない・伝わらない」問題
区がいくら多様な情報発信をしても区民の皆様に届かなければ意味がありません。
スマホを持っていない高齢者にどうやって情報を届けるのか
ハザードマップはもらったが難しくて見ていない
こうした「情報のラストワンマイル」の問題は深刻です。ハザードマップの見方やマイ・タイムラインの作成をもっと身近な町会・自治会単位でサポートする体制強化が必要です。
④ 身近な「内水氾濫」対策の遅れ
多摩川の氾濫のような大規模災害だけでなくゲリラ豪雨による局所的な浸水被害は区内各地で頻発しています。「いつも冠水するアンダーパス」や「雨が降ると溢れる側溝」など身近な危険箇所の改善は待ったなしです。区民の皆様からの情報提供に基づき区が迅速に対処(側溝の清掃、土のうステーションの増設、雨水ますの改善など)できる仕組みをもっと強化しなければなりません。
第5章:ご意見があれば、佐藤なおみまで
水害対策は「自助(自分で備える)」「共助(地域で助け合う)」「公助(行政の対策)」の三つが噛み合って初めて機能します。行政は堤防や下水道といったハード整備を強力に進めると同時に、ハザードマップの周知や避難計画の策定といったソフト対策を徹底しなければなりません。
そして私たち区民一人ひとりは、まずハザードマップで自宅のリスクを知り「マイ・タイムライン」を家族で話し合い、いざという時の備え(備蓄、避難先の確認)をしておく「自助」の努力が求められます。私、佐藤なおみは大田区議会議員として区民の皆様の安全・安心な暮らしを守ることを第一に、
誰一人取り残さない実効性のある避難計画の策定
区民の皆様に『伝わる』情報発信の強化
これらを軸に調査・検討していきたいと思っております。
しかし政治を動かすためには皆様のお声が何よりも必要です。
ハザードマップの見方を教えてほしい
近所に雨が降るといつも溢れる危険な場所がある
避難所にペットは連れて行けるのか
行政の対策はこれで十分だと思うか
どんな小さな不安や疑問、あるいは地域の危険箇所に関する情報でも結構です。皆様の状況を一番具体的な「声」として私に聞かせてください。「こんなことで相談していいのだろうか」とためらう必要は一切ありません。皆様のその不安を解消し安心して暮らせる大田区を作ることが私の仕事です。
皆様からのご相談、ご連絡を心よりお待ちしております。
大田区議会議員 佐藤 なおみ
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