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「猫の不治の病」FIPとの闘い。治療費100万円と家族の覚悟。愛猫モモ、小さな命の実録。

こんにちは。大田区議会議員の佐藤なおみです。

本日は、我が家の保護猫「モモ」がなんの前ぶれもなく「不治の病」と言われたFIPに感染したこと、その闘病生活について書きたいと思います。

手のひらに乗るほど小さかった、モモ(猫の名前)との出会い

我が家に新しい家族がやってきたのは、昨年のことでした。保護施設から譲り受けた、一匹の子猫。手のひらに乗ってしまうほど小さく、ふわふわの毛玉のようなその子に、私たちは「モモ」と名付けました。

最初は新しい環境に戸惑い、ソファの隅で小さくなっていたモモでしたが、持ち前の愛嬌で、すぐに私たちの心、そして先住の犬や猫たちの心まで、あっという間に溶かしてしまいました。

恐る恐る差し出した指先を、小さな舌でぺろりと舐められた時の、あの温かい感触。おもちゃを夢中で追いかける、無邪気な姿。眠る時には、必ず誰かのお腹の上に乗って、ゴロゴロと安心しきった喉を鳴らす甘えん坊。

モモは、その小さな体いっぱいに幸せを運び、私たち家族の日常を、以前にも増して明るく、温かい光で照らしてくれる存在となりました。

言葉を交わすことはできなくても、モモは紛れもなく、私たちのかけがえのない「家族」の一員だったのです。

その穏やかで、当たり前のように続くと思っていた幸せな日々が、ある日突然、音を立てて崩れ去る悪夢が訪れることなど、この時の私たちは知る由もありませんでした。

この記事は、我が家の愛猫モモが、かつて「猫の不治の病」と言われたFIP(猫伝染性腹膜炎)を発症し、私たち家族が経験した、壮絶な闘病の記録です。あまりにも高額な治療費の現実、生と死の狭間で下した決断、そして、小さな命を前に私たちが感じたことの全てを、ありのままに綴りたいと思います。

※モモ、初めてのトイレ

これは、今まさに同じ病気と闘っている猫ちゃん、そして飼い主様への情報共有であると共に、社会全体で「ペットの命」をどう支えていくべきか、という問いを皆様と考えるための、私からのメッセージです。

(第一章) 奈落の底へ。モモを蝕んだ悪夢の一週間

異変の始まりは、本当に些細なことでした。「なんだか元気がないな。風邪でもひいたのかしら」。それが、モモに対する最初の印象でした。季節の変わり目でもあり、少し様子を見ようかとも思いましたが、念のため動物病院へ連れて行きました。しかし、処方された薬を飲ませても、一週間経っても回復の兆しは一向に見えません。

それどころか、モモの容態は、目を覆いたくなるほど急速に悪化の一途をたどっていきました。

あれほど旺盛だった食欲が嘘のようになくなり、大好きだったおやつにも口をつけず、ついにはお水さえ満足に飲めなくなってしまったのです。体重計の数字は、残酷な現実を私たちに突きつけました。ふっくらとして3.5kgあった体重は、みるみるうちに2.4kgまで落ちていました。

抱き上げると、以前のずっしりとした重みはなく、ごつごつとした骨の感触が私の腕の中で、あまりにも軽く、儚く感じられました。

正直に申し上げて、私は「このまま、この子は死んでしまうかもしれない」という生命の危機を、はっきりと感じていました。

呼吸は明らかに浅く速くなり、横たわるももの小さなお腹は、ぜぇぜぇと音を立てて苦しそうに上下するばかり。そして、あれほど綺麗好きで、一度も失敗したことがなかったおトイレを、力なく、あちこちで粗相するようになってしまったのです。

それは、モモが自身の体をコントロールする力さえ、失いつつあることの悲しい証明でした。

病院では40℃を超える高熱が続き、脱水症状を改善するための点滴や、栄養剤の投与を続けましたが、モモの容態は一向に上向くことはありませんでした。日に日に弱っていく姿を前に、私たちはただ祈ることしかできず、万策尽きた、という言葉だけが重く心にのしかかりました。

(第二章) FIPの診断と、あまりにも過酷な選択

打つ手がない中で、獣医師の先生から告げられたのが「FIP(猫伝染性腹膜炎)の可能性があります」という言葉でした。

FIPは、多くの猫が体内に持つ「猫コロナウイルス」が、何らかのきっかけで強毒性に変異して引き起こされる、激烈な症状を伴う病気です。一度発症すれば、有効な治療法は存在せず、致死率はほぼ100%。まさに「猫の不治の病」として、多くの飼い主たちに恐れられてきました。

確定診断のための詳しい検査結果が出るには、1週間ほどかかるとのこと。

しかし、モモの命の灯火は、今にも消えそうでした。1週間も、待てるはずがありません。時間だけが、刻一刻と過ぎていきます。

※動けないモモ

その時、先生から一つの可能性が示されました。近年、国外で開発された新薬を使えば、FIPが寛解する可能性がある、と。しかし、その説明は、一筋の光であると同時に、私たち家族にあまりにも過酷な現実を突きつけるものでした。

この薬は、日本ではまだ未承認の薬であること。
そのため、ペット保険は一切適用されないこと(全額自己負担)。
治療は、84日間、毎日欠かさず薬を投与し続けなければならないこと。
そして、最後に告げられた治療費の概算額に、私は言葉を失いました。

「猫ちゃんの体重によって薬の量も変わりますが、84日間の治療を終えるのに、合計で約100万円はかかると思います」

100万円…..

それは、一個人の家庭にとって、決して簡単に用意できる金額ではありません。検査結果もまだ出ていない。本当に効くかどうかの保証もない。それでも、目の前で弱っていく小さな命を救うためには、この道を選ぶしかない。私たちは、人生の中でも極めて重い、究極の選択を迫られました。

※元気な時のモモ

(第三章) 家族の「覚悟」と、モモが見せてくれた奇跡

しかし、私たち家族の中に、迷いや躊躇はありませんでした。答えは、最初から決まっていました。
「この子は、私たちの大切な家族だから。お金で命を諦めることだけは、絶対にしたくない」

夫も同じ気持ちでした。

あの日、手のひらに乗るほどの小さな命を、生涯大切にすると誓った。その約束を、今こそ果たす時だと。私たちは、モモと一緒に、この病気と闘う覚悟を決めました。たとえどんな負担が伴おうとも、この子の命を救う可能性があるのなら、それに賭けようと。

すぐに、高額な薬を取り寄せ、その日のうちから治療が始まりました。

※嫌がるモモに無理やり薬を投与

夜も生きているのかが不安で、起きては確認して寝て、また起きてはまたモモの吐息を確認して、本当に寝不足の日々が続きました。

※オムツをするモモ

すると、、、、

信じられないような奇跡が起こったのです!!

あれほどぐったりしていたモモが、治療開始からわずか一週間ほどで、自らご飯をねだるようになりました。

むさぼるようにカリカリを食べ、ごくごくとお水を飲む姿を見た時、私は涙が出そうでした。みるみるうちに元気を取り戻し、体重も少しずつ増え始め、今では家の中を走り回り、先住猫とじゃれ合いをするまでになりました。

※ちゅーるを欲しがるモモ

治療はまだ道半ばです。

再発を防ぐためには、84日間の投薬を一日も欠かさずにやり遂げなければなりません。そして、モモの体重が増えれば、それに比例して薬の投与量も増え、費用もさらにかさんでいきます。

嬉しい悲鳴とは、まさにこのことです。高額な出費は、今も私たちの家計に重くのしかかっています。
それでも、腕の中で元気に喉を鳴らすももの温もりを感じるたびに、あの時、諦めなくて本当に良かったと心の底から思うのです。

(第四章) この経験から見えた、社会の課題

モモの闘病という、一個人の壮絶な体験。

しかし、その背景には、ペットと暮らす全ての人が無関係ではいられない、社会的な課題が横たわっていると、私は議員として痛感しています。

ペット医療の「ドラッグ・ラグ」:
海外では効果が認められ、多くの命を救っている薬が、日本ではなかなか承認されず使えない。この「未承認薬」問題が、FIPのように治療法があるにも関わらず、救われない命や、飼い主の高額な経済的負担を生んでいます。

ペット保険の限界:
多くの飼い主が、万が一に備えて加入するペット保険も、今回のような「保険適用外」の治療には対応できません。いざという時の備えが、決して万能ではないという厳しい現実があります。

経済格差が「ペットの命の格差」に:
そして、最も深刻な問題は、治療費を負担できるかどうかが、ペットの生死を分けてしまう現実です。全ての飼い主が、私たちと同じ決断を下せるわけではありません。経済的な理由で、愛する家族の命を諦めなければならない飼い主の断腸の想いを思うと胸が張り裂けそうです。

ペットの命は、飼い主の経済力によって左右されてしまって、本当に良いのでしょうか。私は、断じてそうではないと信じます。

(結び) 小さな命を守れる社会を、あなたと共に

モモの治療は、まだまだ続きます。

しかし、私たちの心は希望に満ちています。日に日に元気になっていくその姿が、何よりも私たちに勇気と力を与えてくれるからです。

この記事を読んでくださっている方の中にも、今まさにFIPと闘っている方、そして、愛するペットのもしもを案じている方がいらっしゃるかもしれません。

どうか、一人で抱え込まないでください。
FIPは、もはや「不治の病」ではない、という希望の光が見え始めています。

そして、私は一人の政治家として、この経験を絶対に無駄にしたくないと思ってます。おそらく今の日本ではペットの薬の承認プロセスを迅速化することはとても難しいことでしょう。高額な先進医療に対する何らかの公的な支援の道を模索できたらと考えております。

そして何より、ペットが「家族」として尊重され、その命が経済的な理由で見捨てられることのない社会を創ること。

そのために、様々な場所で、外で、粘り強く声を上げ続けてまいります。
モモ、最後まで一緒にがんばろうね。

あなたの小さな命が、きっと、この社会を少しだけ優しく変える力になると私は信じています。

大田区議会議員 佐藤 なおみ

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