いつも区政への温かいご理解とご協力を賜り、心より感謝申し上げます。
大田区議会議員の佐藤なおみです。
さて、今日は区民の皆様の生活に密着した、大切な「足」のお話です。先日、区内に住む私の母から電話がありました。「次の検査の日なんだけど、もし良かったら一緒に来てもらえないかしら。最近、バス停までの道のりが少し遠く感じてね…」。幸い、その日は私も公務がなく、栃木に在住の母の通院に付き添うことができました。
母はまだ自力で歩けますが、それでも以前より少し足元がおぼつかなくなった姿を目の当たりにし、「いつまでも当たり前に外出できるわけではない」という現実を、私自身の問題として痛感させられました。そして同時に、大田区の区民の皆様から寄せられる「通院や買い物に行くのが大変になった」という切実な声の重みを、改めて深く受け止めた次第です。
誰もが、年齢や身体の状態にかかわらず、行きたい場所へ行き、参加したい活動に参加できる。そんな当たり前の日常を支えるために、大田区には「福祉タクシー制度」があります。
この制度は、多くの方にとって、まさに”命綱”とも言える重要なサービスです。しかし、その一方で「制度の存在自体を知らなかった」「自分が対象になると思わなかった」という声も少なくありません。
そこで今回は、この大田区福祉タクシー制度について、その成り立ちから現在の課題まで、一人の娘として、そして区民の皆様の声を預かる議員として、詳しくお伝えしたいと思います。
なぜ「福祉タクシー制度」が必要なのか
この制度が生まれた背景には、日本の急速な高齢化と、「地域全体で支え合う」という福祉の考え方の広がりがあります。
かつて、高齢の方や障害のある方の移動は、ご家族が支えるのが当たり前とされていました。しかし、社会構造が変化し、ご高齢者だけの世帯や、日中は働きに出ているご家族が増える中で、通院一つとっても、その負担は計り知れないものになっていきました。
「家族に迷惑をかけたくない」と外出をためらい、社会的に孤立してしまう。そんな状況を何とかしなければならない。こうした問題意識から、1990年代以降、全国の自治体で移動支援の仕組みづくりが本格化しました。
大田区でも、「誰もが住み慣れた地域で、安心して暮らし続けられるまち」を目指し、早くからこの課題に取り組んできました。単にタクシー料金を補助するだけでなく、車いすのまま乗車できるリフト付きタクシーの利用を支援する「大田区外出支援サービス」という、より踏み込んだ独自の制度を設けているのは、「移動の選択肢を確保し、一人ひとりの尊厳ある暮らしを守りたい」という、大田区の強い決意の表れに他なりません。
現在の状況:大田区の制度を詳しく知る
それでは、現在の制度について具体的に見ていきましょう。大田区の支援は、対象となる方の状況に合わせて、主に2つの柱で構成されています。
【柱1】福祉タクシー利用券(運賃の補助)
こちらは、重度の障害がある方のタクシー運賃を直接補助する、基本となる制度です。
対象となる方: 大田区にお住まいで、身体障害者手帳1・2級、愛の手帳1・2度、精神障害者保健福祉手帳1級のいずれかをお持ちの方。
支援の内容: 1枚500円の利用券を、年間最大96枚(48,000円分)交付します。人工透析で週3回以上通院されている方には、年間最大144枚(72,000円分)を交付し、より手厚く支援しています。
使える場所: 大田区と契約したタクシー事業者で利用できます。いわゆる「介護タクシー」だけでなく、一般のタクシーでも使えるのが特徴です。
【柱2】大田区外出支援サービス(リフト付きタクシーの利用支援)
こちらは、車いすやストレッチャーを日常的に利用されている方が、リフト付きの専門的なタクシーを利用しやすくするための制度です。
対象となる方:
大田区にお住まいで、車いすやストレッチャーを常時利用し、バスや電車などの公共交通機関の利用が難しい方。
支援の内容:
リフト付きタクシーの運賃が割引になる利用券が交付されます。素晴らしいのは、上記の「福祉タクシー利用券」と併用できる点です。これにより、利用者の負担を大きく軽減することができます。
使う方法:申請から利用までの流れ
制度を利用するためには、事前にお住まいの地域を管轄する「地域福祉課」の窓口で申請が必要です。
【申請から利用までの簡単な流れ】
相談・申請:
障害者手帳など必要な書類を持参し、地域福祉課の窓口で申請します。職員が丁寧に対応してくれますので、ご自身の状況をまずはご相談ください。
審査・登録:
区で審査が行われ、対象となる方には利用券が交付されたり、外出支援サービスの利用登録が行われたりします。
タクシーの予約(リフト付きの場合):
外出支援サービスの対象となるリフト付きタクシーは、ご自身で区と契約している事業者に直接電話などで予約します。
利用・支払い:
乗車当日、降車時に運賃を支払います。その際、利用券を運転手さんに渡すことで、補助を受けることができます。
少し手続きが必要ですが、一度登録すれば、その後の外出が格段にしやすくなります。ご本人だけでなく、ご家族やケアマネージャーさんが代理で申請することも可能ですので、諦めずにまずは一歩を踏み出していただきたいと願っています。
課題と問題点:制度が直面する現実
障害者手帳など必要な書類を持参し、地域福祉課の窓口で申請します。職員が丁寧に対応してくれますので、ご自身の状況をまずはご相談ください。
審査・登録:
区で審査が行われ、対象となる方には利用券が交付されたり、外出支援サービスの利用登録が行われたりします。
タクシーの予約(リフト付きの場合):
外出支援サービスの対象となるリフト付きタクシーは、ご自身で区と契約している事業者に直接電話などで予約します。
利用・支払い:
乗車当日、降車時に運賃を支払います。その際、利用券を運転手さんに渡すことで、補助を受けることができます。
少し手続きが必要ですが、一度登録すれば、その後の外出が格段にしやすくなります。ご本人だけでなく、ご家族やケアマネージャーさんが代理で申請することも可能ですので、諦めずにまずは一歩を踏み出していただきたいと願っています。
区民の皆様の暮らしを支えるこの重要な制度も、いくつかの大きな課題に直面しています。これらは、私、佐藤なおみが議会活動を通じて、特に強く問題意識を持っている点です。
最大の課題は、リフト付きタクシーなどを運転できる専門的なドライバーが、全国的に不足していることです。介助には知識と体力が不可欠であり、担い手の確保・育成は待ったなしの状況です。需要があるのに、予約が取れない「移動難民」を生み出しかねない深刻な問題です。
地域によるサービス格差:
大田区は広く、地域によってタクシー事業者の数に偏りがあります。特に、駅から離れた地域にお住まいの方からは「タクシーを呼んでもなかなか来てくれない」という声も伺います。どこに住んでいても、公平にサービスを受けられる体制の構築が急務です。
制度の「すきま」にいる人々:
現在の制度は、主に重度の障害者手帳をお持ちの方が対象です。しかし、手帳はないものの、私の母のように「少し足腰が弱り、長距離の移動が不安になった」という高齢者の方は大勢いらっしゃいます。こうした方々を支える、新たな支援のあり方も模索していく必要があります。
財源の確保と持続可能性:
今後、大田区の高齢化はさらに進みます。制度の利用者が増え続ける中で、この大切なサービスを未来にわたって維持していくためには、安定した財源をいかに確保していくか。これは区政全体の大きな課題です。
おわりに
母の通院に付き添ったあの日、無事に病院に着くと、母は「ありがとう、助かったわ」と、心からほっとした顔で私に言いました。その笑顔を見て、人が「行きたい場所へ、行きたい時に行ける」ということは、単なる移動以上の、生きる希望や尊厳そのものなのだと、改めて胸に刻みました。
福祉タクシー制度は、決して特別なものではありません。私たちが、この大好きな大田区で、自分らしく、誇りを持って暮らし続けていくために不可欠な社会基盤です。
私、佐藤なおみは、区議会議員として、この制度が抱える課題から目をそむけることなく、ドライバーの確保支援や、より利用しやすい制度への改善、そして安定的な財源の確保に取り組んでまいります。
皆様の現場の声を、どうか私にお聞かせください。その一つひとつの声が、大田区の福祉を前に進める大きな力となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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