皆さま、こんにちは。大田区議会議員の佐藤なおみです。
日頃より区政へのご理解とご協力を賜り、心より感謝申し上げます。さて、本日は私たちの生活に最も身近で、そして未来の世代に豊かな環境を引き継ぐために避けては通れない「ごみ問題」について、皆さまと一緒に考えていきたいと思います。
「ごみの分別は、毎日やっているから大丈夫」「粗大ごみも何度か出したことがあるよ」という方も多いかもしれません。しかし、そのルールが時代と共にどう変わり、なぜ今のような分別が必要になったのか、そして、いざという時に迷いがちな「粗大ごみ」の出し方について、意外と知られていない点があることも事実です。
私の元にも、区民の方々から「このごみは何に分類されるの?」「引っ越しで大量に出る粗大ごみの手続きが大変で…」「高齢の親の家の片付けを手伝っているが、ごみ出しに苦労している」といった声が寄せられます。
ごみ問題は、単に「ごみを捨てる」という日々の行為に留まりません。それは、私たちの暮らしのあり方、資源に対する考え方、そして区の財政や環境政策そのものを映し出す鏡なのです。
この記事では、まず大田区のごみ分別の「これまで」と「今」を振り返り、なぜ分別が必要なのかを改めて共有したいと思います。その上で、本題である「粗大ごみ」の出し方について、申し込みから排出までの手順を、できる限り分かりやすく、そして詳しく解説していきます。さらに、私たちが直面しているごみ問題の課題と、これからの大田区が目指すべき未来についても、私なりの考えをお話しさせていただきます。
少々長くなりますが、皆さまの大切な時間を少しだけお借りできれば幸いです。このブログが、皆さまの毎日の一助となり、そして大田区の未来を共に考えるきっかけとなることを願っています。
第1章:大田区のごみ分別の「これまで」と「今」~なぜ、私たちは分別するのか~
1-1. ごみは全て「一緒」だった時代
今では当たり前となったごみの分別ですが、ほんの数十年前まで、家庭から出るごみは「可燃」と「不燃」に分ける程度、あるいはそれすらなく、ほとんどのごみを一つの袋に入れて捨てていた時代がありました。私が子どもの頃の記憶をたどっても、今ほど細かい分別はしていませんでした。
当時は高度経済成長期を経て、大量生産・大量消費が社会の主流でした。作っては使い、そして捨てる。それが当たり前のサイクルであり、ごみの「処理」は、主に焼却するか、埋め立てるかという方法に頼っていました。大田区もまた、東京湾の埋め立て地にごみを受け入れてきた歴史があります。
しかし、この「作って、使って、捨てる」という一方通行の社会は、やがて二つの大きな問題に直面します。
一つは「ごみの量の爆発的な増加」です。経済が豊かになり、便利な商品が次々と生まれる一方で、排出されるごみの量は増え続け、焼却施設の処理能力や埋め立て地の確保が深刻な課題となっていきました。このままでは、ごみを捨てる場所がなくなってしまう。そんな危機感が現実のものとして迫ってきたのです。
もう一つは「環境問題の深刻化」です。ごみの焼却は大気汚染の原因となり、埋め立て地からは有害物質が漏れ出す危険性も指摘されました。また、限りある地球の資源を使い捨てにすることへの反省から、持続可能な社会への転換が世界的に叫ばれるようになりました。
1-2. 「捨てる」から「活かす」へ。容器包装リサイクル法
こうした状況を背景に、日本のごみ問題は大きな転換点を迎えます。その象徴が、1995年に制定され、段階的に施行された「容器包装リサイクル法(容リ法)」です。
これは、家庭から出るごみの容積比で約6割を占める「容器」や「包装」(例えば、ペットボトル、商品の箱、お菓子の袋など)を、単なるごみではなく「資源」として分別・収集し、リサイクルすることを義務付けた法律です。
この法律の画期的な点は、「消費者(私たち)は分別排出し、市町村(大田区)は分別収集し、事業者(メーカーなど)はリサイクルする」という、それぞれの役割を明確にしたことでした。
この容リ法をきっかけに、大田区でも分別ルールが大きく変わりました。それまで「ごみ」として一緒に捨てられていたペットボトル、びん、缶、プラスチック製の容器などが「資源」として独立した収集品目となったのです。
当初は「面倒だ」「なぜこんなに細かく分ける必要があるのか」といった戸惑いの声があったのも事実です。しかし、この地道な分別の積み重ねが、ごみの減量と資源の有効活用に繋がり、最終処分場(埋め立て地)の延命に大きく貢献しているのです。
1-3. 現在の大田区の分別ルールと、その目的
現在、大田区ではごみと資源を主に以下のカテゴリーに分けて収集しています。
資源
びん・缶・ペットボトル:中をすすいで、それぞれ分けて出す。
プラスチック製容器包装:商品が入っていたプラスチック製のボトル、トレイ、袋などで、「プラマーク」が目印。
粗大ごみ:一辺の長さが30cmを超える家具、寝具、自転車など(後ほど詳しく解説します)。
これだけ細かく分けるのはなぜか。その目的は大きく3つあります。
- 資源の有効活用(サーキュラーエコノミーの実現): 分別されたペットボトルは新たなペットボトルや衣類に、古紙は再生紙に生まれ変わります。限りある資源を繰り返し使う「循環型社会(サーキュラーエコノミー)」を実現するための第一歩が、私たちの分別なのです。
- 埋立地の延命: 東京湾にある最終処分場は、無限ではありません。分別してリサイクルや焼却できるものを徹底的に分けることで、埋め立てるごみの量を極限まで減らし、処分場を一日でも長く使い続けることができます。
- 環境負荷の低減: 正しく分別することで、焼却効率が上がり、有害ガスの発生を抑制できます。また、新たな製品をゼロから作るよりも、リサイクルした方がエネルギー消費を大幅に抑えられ、CO2排出量の削減にも繋がります。
分別は、少し手間がかかるかもしれません。しかし、その一手間が、未来の大田区、そして地球全体の環境を守るための、私たち一人ひとりができる確実な貢献なのです。
最近では、スマートフォンのごみ分別アプリ「さんあーる」を導入し、収集日をお知らせしたり、品目ごとの分別方法を手軽に検索できるようにしたりと、区としても皆さまの分別をサポートする取り組みを進めています。ぜひご活用いただければと思います。
第2章:【本題】粗大ごみの出し方、正しく理解していますか?申し込みから排出までの完全ガイド
さて、ここからが本日のメインテーマである「粗大ごみ」の出し方についてです。引っ越しや大掃除、家具の買い替えなど、生活の節目で必ずと言っていいほど出てくるのが粗大ごみ。年に数回しか利用しないためか、「どうやって申し込むんだっけ?」「この場合はどうすれば?」と迷われる方が非常に多いのが実情です。
いざという時に慌てないよう、ここで一度、手順をしっかりと確認しておきましょう。
2-1. まず確認、これは「粗大ごみ」?
最初に、処分したいものが大田区で「粗大ごみ」として扱われるかどうかを確認する必要があります。
【大田区における粗大ごみの定義】
家庭から出る、一辺の長さが概ね30cmを超える家具、寝具、電気製品(※)、自転車など
【粗大ごみとして出せないもの】
ここが非常に重要なポイントです。以下の品物は、法律などにより区では収集できません。誤って粗大ごみの申し込みをしないよう、十分にご注意ください。
家電リサイクル法対象品目
エアコン、テレビ(ブラウン管式、液晶・プラズマ式)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機
製品を購入した販売店、または買い替えをする販売店に引き取りを依頼する。
上記が難しい場合:家電リサイクル受付センターに申し込み、収集を依頼するか、指定引取場所に自分で持ち込む。
※いずれもリサイクル料金と収集運搬料金(収集を依頼する場合)が必要です。
パソコンリサイクル対象品目
デスクトップパソコン本体、ノートパソコン、ディスプレイ(一体型含む)
各パソコンメーカーの受付窓口に回収を申し込みます。「PCリサイクルマーク」が付いている製品は、無料でメーカーが回収・リサイクルします。
自作パソコンや倒産したメーカーの製品などは、「パソコン3R推進協会」が有償で回収します。
処理が困難なもの
事業活動に伴って出たごみ
店舗や会社、事業所などから出る粗大ごみは、家庭ごみの収集には出せません。産業廃棄物として、許可を持つ専門の処理業者に依頼する必要があります。
まずは、処分したいものが「粗大ごみ」に該当するかどうか、上記の点を確認することから始めましょう。
2-2. ステップ・バイ・ステップ。粗大ごみ処分の4つの手順
処分したいものが「粗大ごみ」であることが確認できたら、いよいよ申し込みです。手順は大きく分けて4つのステップになります。
【ステップ1】申し込み(事前申込制)
粗大ごみは、必ず事前に「大田区粗大ごみ受付センター」へ申し込む必要があります。申し込みをしていないものは、集積所に出しても絶対に収集されませんのでご注意ください。
申し込み方法は「電話」と「インターネット」の2種類です。
① 電話での申し込み
受付時間: 月曜日~土曜日 午前8時~午後7時(祝日も受付、年末年始を除く)
特徴
オペレーターと直接話せるので、品目の確認や料金の問い合わせ、出し方の相談などがその場でできます。「これは粗大ごみになる?」「手数料はいくら?」といった疑問がある場合は、電話が安心です。
月曜日の午前中や祝日の翌日などは、電話が大変混み合い、繋がりにくいことがあります。時間をずらしてかけ直すなどのご協力をお願いいたします。
② インターネットでの申し込み
受付時間:24時間365日(メンテナンス時を除く)
特徴
時間を気にせず、いつでも自分のペースで申し込めるのが最大のメリットです。
品目リストから選択する形式なので、品目が明確な場合はスムーズです。メールアドレスの登録が必要となります。
一度に申し込みできる個数に上限がある場合があります(例: 10個まで)。
【申し込み時に準備しておくこと・伝えられること】
申し込みをスムーズに進めるために、事前に以下の情報を準備しておくと良いでしょう。
準備しておく情報
処分したい品物の正確な品目とサイズ(高さ・幅・奥行き)、そして数量
特にタンスや棚、テーブルなどは、サイズによって手数料が変わります。必ずメジャーなどで測っておきましょう。
申し込み時に伝えられる情報
受付番号: 申し込みの証明となる番号です。必ず控えておきましょう。
手数料(ポイント)の合計金額: 処分したい品物に応じた手数料の合計額が伝えられます。
【ステップ2】手数料の支払い(有料粗大ごみ処理券の購入)
申し込みが完了したら、案内された金額分の「有料粗大ごみ処理券」を購入します。これは、処分手数料を支払った証明となるシールです。
処理券の種類
購入場所
【ステップ3】処理券の貼り付け
購入した処理券を、処分する粗大ごみに貼り付けます。この作業も非常に重要です。
記入事項
貼り付け
【ステップ4】排出(ごみを出す)
いよいよ最後のステップです。ルールを守って、正しく排出しましょう。
排出日時
排出場所
注意点
以上が、粗大ごみ処分の基本的な流れです。一つ一つのステップを確実に行うことが、スムーズな処分に繋がります。
2-3. ちょっとお得でエコ「持ち込み処分」という選択肢
「収集日まで待てない」「少しでも安く処分したい」という方には、自分で区の指定施設に持ち込むという方法もあります。
手順
ご自身で運搬手段を確保できる場合は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
第3章:大田区が直面するごみ問題の課題と、私たちが目指す未来
粗大ごみの出し方について詳しく解説してきましたが、最後に、議員という立場から、大田区が現在直面しているごみ問題のより大きな課題と、これからの展望についてお話しさせてください。
3-1. 待ったなしの課題~高齢化、不法投棄、そして食品ロス~
① 高齢化と「ごみ出し困難者」の問題
大田区も例外なく、高齢化が進行しています。それに伴い、ご自身でごみ集積所までごみを運ぶことが困難な高齢者世帯や、障がいをお持ちの世帯が増加しています。粗大ごみのような大きくて重いものであれば、なおさらです。
区では、一定の要件を満たす世帯を対象に、職員が戸別訪問してごみを収集する**「ふれあい収集」**という支援事業を行っています。しかし、制度の周知や、対象とならないものの支援が必要な「制度の狭間」にいる方々への対応など、きめ細やかなサポート体制の拡充が今後の課題です。地域包括支援センターや民生委員、そしてご近所の皆さまとの連携をさらに深め、誰もが安心して暮らせる地域社会を築いていく必要があります。
② 後を絶たない不法投棄
残念ながら、粗大ごみを正規の手続きを踏まずに、公園や道路脇、空き地などに不法に投棄する事例が後を絶ちません。不法投棄は、街の景観を損なうだけでなく、火災の原因になったり、環境を汚染したりと、百害あって一利なしの犯罪行為です。
その処理には、私たちの税金が使われることになります。区ではパトロールの強化や監視カメラの設置などの対策を進めていますが、最も大切なのは、区民一人ひとりが「ルールを守る」という高い意識を持つことです。「少しくらいなら」という気持ちが、街の美観を、そして私たちの暮らしの質を低下させてしまうことを、改めて認識する必要があります。
③ 「もったいない」をなくすために~食品ロス(フードロス)との闘い~
可燃ごみの約4割は「生ごみ」であり、その中には、まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」が大量に含まれていると言われています。これは、資源の無駄遣いであると同時に、ごみの焼却量を増やし、CO2排出量を増加させる大きな原因です。
大田区では、家庭で余った食品を集めて福祉施設などに寄付する「フードドライブ」活動を推進していますが、まだまだ十分とは言えません。各ご家庭で「買いすぎない」「作りすぎない」「食べきる」といった意識を徹底すること、そして、区として食品ロス削減に取り組む事業者への支援や、学校教育における食育の充実などを、さらに強力に進めていく必要があると考えています。
3-2. 未来への提案~持続可能な大田区を目指して~
これらの課題を乗り越え、持続可能な循環型社会を実現するために、私は以下の三つの視点が重要だと考えています。
ごみ収集の効率化のために、ごみ集積所の満杯度をセンサーで検知し、最適な収集ルートをAIが算出する「スマートごみ収集システム」のような先進技術の導入を検討すべき時期に来ています。また、分別アプリの機能をさらに拡充し、リサイクルの成果がポイントとして貯まるような、ゲーム感覚で楽しくごみ減量に取り組める仕組みづくりも有効でしょう。
ごみ問題の最も効果的な解決策は、そもそも「ごみを出さない」ことです。そのために、マイバッグやマイボトルの利用促進はもちろん、過剰包装をなくすよう事業者に働きかけたり、まだ使える家具や衣類を地域内で循環させるリユースのプラットフォームを区が支援したりするなど、「捨てる」以外の選択肢を当たり前にしていく文化を醸成する必要があります。
未来を担う子どもたちが、幼い頃からごみ問題や環境問題に関心を持ち、当事者として考える機会を増やすことが不可欠です。出前授業やごみ処理施設の見学などを通じて、分別の一手間が地球の未来に繋がっていることを実感できるような、体験型の環境教育をさらに充実させていきたいと考えています。
おわりに
本日は、大田区のごみ問題、特に粗大ごみの出し方を中心にお話しさせていただきました。
日々の分別や、少し面倒に感じる粗大ごみの手続きは、決して当たり前のことではありません。それは、より良い環境を未来に残そうとする、私たち一人ひとりの責任感と良心に支えられています。皆さまのご協力なくして、大田区の環境行政は成り立ちません。
ごみ問題は、私たちの暮らしの縮図です。どうモノと向き合い、どう社会と関わり、どう未来を考えるか。そのすべてが、一つのごみ袋に込められていると言っても過言ではないでしょう。
私も一議員として、区民の皆さまの声に真摯に耳を傾け、誰もが快適に、そして誇りを持って暮らせる「きれいなまち大田区」の実現に向け、全力で取り組んでまいる所存です。
この記事を読んで、ごみ問題について少しでも関心を持っていただけたり、「粗大ごみの出し方がよく分かった」と思っていただけたりすれば、これに勝る喜びはありません。
ご意見、ご質問などございましたら、いつでもお気軽に私の事務所までお寄せください。皆さまと共に、この大田区をより良いまちにしてまいりましょう。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
大田区議会議員 佐藤なおみ
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