こんにちは、大田区議会議員の佐藤なおみです。
皆さんが納めてくださっている税金。それが、私たちの暮らす大田区で、どのように使われているかご存知でしょうか?「区役所が決めているんでしょ?」「なんだか難しそう…」と感じる方がほとんどかもしれません。
実は、その使い道を決める、非常に重要な場所があります。それが「予算特別委員会」です。
毎年2月から3月にかけて、私たち議員は、この予算特別委員会にほぼ付きっきりになります。連日、朝から晩まで、分厚い予算書とにらめっこし、区の幹部職員と議論を重ねるのです。それはまさに、大田区の来年度一年間の「設計図」を決める、真剣勝負の場。
今回は、普段はなかなか見ることのできない、この「予算委員会の世界」にご案内したいと思います。皆さんの納めた税金が、どのようにして「暮らしのサービス」に変わっていくのか。そのプロセスを知っていただくことで、区政がもっと身近に感じられるはずです。
そもそも「予算」って何?家庭の「家計簿」と同じです
「予算」と聞くと、なんだか難しい言葉に聞こえますよね。でも、実はとてもシンプルです。
予算とは、1年間で「入ってくるお金(歳入)」と「出ていくお金(歳出)」の見積もりのこと。
これは、皆さんのご家庭でつけている「家計簿」と全く同じです。
歳出(支出):子育て支援、高齢者福祉、道路や公園の整備、ごみ収集、教育など
大田区の令和7年度の一般会計予算は、約3,800億円。この莫大なお金を、区民の皆さんのために、いかに有効に、そして公平に使うかを決めるのが、私たちの大きな仕事なのです。
物語は秋から始まる~予算案ができるまで~
来年度の予算を決める議論は、実は前年の秋頃から始まっています。
区役所内の動き(秋~冬)
まず、区長が「来年度はこういう方針で区を運営していきますよ」という大きな方向性(施政方針)を示します。
それを受けて、区役所の各部署(例えば、子育て支援の部署なら「もっと保育園を増やしたい」、道路を管理する部署なら「あのデコボコ道を直したい」など)が、「私たちの部署では、来年度これだけの事業に、これだけのお金が必要です」という要求書を作成します。
財政課という、区のお財布を管理する部署が、各部署からの要求をすべて集め、区全体の収入の見込みと照らし合わせながら、全体のバランスを調整します。これが、予算の「原案」です。
区長案の決定(1月~2月)
財政課がまとめた原案を、最終的に区長がチェックし、区としての正式な「予算案」が決定されます。
議会へ提出(2月)
そして2月。区長から私たち区議会に対して、「この予算案で来年度の区政運営を行いたいので、審議して承認してください」と、予算案が提出されます。
ここからが、いよいよ私たち議員の出番です。
予算特別委員会のリアルな姿
区長から提出された予算案を審議するために、議会に設置されるのが「予算特別委員会」です。議長と副議長を除く全議員が委員となり、約1か月にわたって、予算案の中身を徹底的にチェックしていきます。
委員会の部屋には、大きな「コ」の字型に机が並びます。片方には私たち議員、そして向かい側には、区長をはじめ、副区長、教育長、そして各部署のトップである部長たちがズラリと席に着きます。
私たちの手元には、電話帳のように分厚い「予算説明書」が何冊も配られます。ここには、約3,400億円の使い道が、1つ1つの事業ごとに、本当に細かく書かれています。
「新しい公園の遊具購入に〇〇円」
「〇〇保育園の運営委託料に〇〇円」
…など、その数、数千項目。私たちは、この膨大な資料を読み込み、疑問点を洗い出していくのです。
ある委員会の1日(例)
それではどのようにして委員会での質疑にまでたどり着くのかを例題にあげて書いてみたいと思います。
※ここからは質問の例となります。
となる予算特別委員会でのこと、私が特に注目していたのは、「不登校児童・生徒への支援」に関する予算でした。近年、全国的にも不登校の児童・生徒は増加傾向にあり、大田区も例外ではありません。保護者の皆さんからも、切実な相談を多く受けていました。
予算説明書を読み込むと、「教育支援センター(適応指導教室)の運営費」や「スクールカウンセラーの配置費」などが計上されています。しかし、私は「本当にこれだけで十分なのだろうか?」という疑問を持ちました。
そこで私は、委員会での質問(質疑と言います)に備え、事前準備を始めました。
1,情報収集:
まず、大田区の不登校の現状に関するデータを徹底的に分析。過去5年間の推移、学年別の人数、そしてどのような支援がどれくらい利用されているのか。
2,現場の声:
次に、実際に不登校のお子さんを持つ保護者の方々や、フリースクールを運営しているNPOの代表の方に直接お話を伺いました。「今の区の支援では、ここが足りない」「こんなサポートがあれば、子どもが一歩を踏み出せるかもしれない」といった、現場のリアルな声を集めました。
3,他自治体の調査:
先進的な取り組みを行っている他の自治体の事例も調べました。ICTを活用した在宅学習支援や、保護者同士が繋がれるコミュニティサロンの設置など、大田区でも参考にできるヒントがたくさん見つかりました。
そして、質疑当日。教育委員会の責任者である教育長に対して、質問に立ちます。
「教育長にお伺いします。本予算案には、不登校支援策として〇〇事業に〇〇円が計上されています。しかし、現場からは、支援メニューが少なく、本当に困っている親子に情報が届いていないという声が上がっています。例えば、先進的な〇〇市では、〇〇を活用した新しい形の居場所づくりを行い、成果を上げています。大田区としても、既存の支援策の拡充はもちろん、子どもたちがアクセスしやすい、多様な選択肢を用意すべきと考えますが、ご見解はいかがでしょうか?」
ただ「予算を増やせ」と主張するだけでは、建設的な議論にはなりません。具体的なデータや現場の声、そして対案を示すことで、区の執行機関も「なるほど、確かにそういう視点もあるな」「検討の必要があるな」と考えてくれるのです。
私の質問に対し、教育長からは「議員ご指摘の点は、私どもも課題として認識しております。ICTを活用した新たな支援のあり方については、先進事例を参考に、調査・研究を進めてまいります」という前向きな答弁を引き出すことができました。
このように、予算委員会は、単にお金の計算をする場所ではありません。一つ一つの数字の向こう側にある「区民の暮らし」を想像し、「より良い未来」のために、行政と議会が知恵を絞り、議論を戦わせる場所なのです。
委員会は連日、夜遅くまで続きます。帰宅後も、翌日の質疑の準備で、深夜まで資料を読み込む日々。正直、体力的にはかなり厳しいです。しかし、「あの親子の笑顔のために」「この地域の安全のために」と思うと、自然と力が湧いてくるのです。
税金が「暮らしのサービス」に変わる瞬間
約1か月にわたる厳しい審議を経て、私たち委員会は、最終的にこの予算案に「賛成」か「反対」かの結論を出します(採決)。
時には、「この事業は無駄遣いではないか?」と判断した予算を削ったり、「この事業にはもっとお金をかけるべきだ」として、内容を修正するよう求める「付帯決議」を付けたりすることもあります。
こうして委員会で可決された予算案は、最終的に全議員が出席する「本会議」にかけられ、そこで可決されれば、晴れて来年度の予算が成立します。
この瞬間から、予算は「単なる数字」から「生きたお金」に変わります。
皆さんがいつも通る道が、きれいに舗装される。
お子さんが、新しい遊具のある公園で、楽しそうに遊ぶ。
高齢のおじいちゃん、おばあちゃんが、便利な福祉サービスを受けられる。
図書館に、読みたかった新しい本が入る。
これらはすべて、あの予算特別委員会での議論を経て、決定されたことなのです。私たちが質疑の中で訴えた「不登校支援の拡充」も、この先の未来で、形になっていくはずです。
あなたの声を、議会へ
「予算委員会の世界」、いかがでしたでしょうか。
少しでも、議会が「遠い存在」ではなく、「私たちの暮らしと直結している場所」だと感じていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。
「私の家の前の道路、危ないから直してほしいな」
「もっと子育てしやすいように、こんなサービスがあったらいいのに」
皆さんのそんな日々の「声」こそが、私たち議員が予算をチェックする上での、何よりの羅針盤になります。私、佐藤なおみも、皆さんの声を一つでも多く予算に反映させるため、精進してまいります。
ぜひ、これからも大田区の予算の使い道に、関心を持ってみてください。そして、何かお気づきの点があれば、いつでもお気軽にお声がけください。
あなたの声が、大田区の未来を作ります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
大田区議会議員 佐藤 なおみ
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