大田区議会議員の佐藤なおみです。
日頃より区政にご理解とご協力を賜り、心より感謝申し上げます。
さて、私の元には区民の皆様から、日々の生活に関する様々なお声が寄せられます。中でも最近、特に多くのお問い合わせをいただくのが「給付金」に関する事柄です。「高齢者の自分は対象になるのか」「子育て世帯向けの給付金とは何が違うのか」「この支援はいつまで続くのか」といったご質問や、将来への不安のお声に、身の引き締まる思いで耳を傾けております。
そこで本日は、区民の皆様の関心が高い「大田区の給付金」をテーマに、なぜ今こうした支援が必要とされているのか、その背景から現状の課題、そして私たちの未来にどう繋がっていくのかまで、具体的なデータを交えながら掘り下げてお話しさせていただきたいと思います。
少々長くなりますが、私たちの暮らしと大田区の未来に関わる大切なお話ですので、ぜひ最後までお付き合いいただけますと幸いです。
大田区で給付金が支給される社会的背景
まず、なぜ今、現金給付という形での支援が続いているのか、その背景からご説明します。
記憶に新しいのは、2020年から始まった新型コロナウイルス感染症の世界的な流行です。私たちの生活は一変し、経済活動も大きな打撃を受けました。その緊急事態に対応するため、国は全国民を対象とした「特別定額給付金」の支給を決定しました。これは、生活の基盤を支えるための、いわば緊急避難的な措置でした。
そしてコロナ禍が落ち着き始めた後、私たちの生活を次に襲ったのが、世界的な物価高騰の波です。円安の進行や国際情勢の不安定化を背景に、電気やガスといったエネルギー価格、そして食料品や日用品など、生活に欠かせないあらゆるものの値段が上がりました。
特に、年金など限られた収入で生活されている高齢者の方々や、教育費など何かと出費の多い子育て世帯にとって、この物価高は日々の家計を直接圧迫する深刻な問題です。
こうした状況を受け、国は物価高騰による国民の負担を軽減するための経済対策を打ち出しました。その一環として、特に影響が大きい住民税非課税世帯などの低所得世帯を対象とした給付金の支給を決定し、その実務を私たち基礎自治体(区市町村)が担うことになったのです。
つまり、現在行われている給付金の多くは、「物価高騰から区民の生活を守る」という明確な目的を持った、国の経済対策に基づいた支援である、という点が大きな背景となっています。
高齢者向けと子育て向け、給付金の違いとは?
「高齢者向けの給付金と、子育て世帯向けの給付金は何が違うの?」というご質問もよくいただきます。どちらも大切な支援ですが、その目的と性格には少し違いがあります。
高齢者・低所得者向け給付金:「現在の生活を守る」ための支援
現在、高齢者の方々が主な対象となっている給付金は、「住民税非課税世帯等に対する物価高騰重点支援給付金」といった名称のものです。これは、年齢で区切っているわけではなく、「所得が一定基準以下であること」を支給要件としています。
結果として、主な収入が年金である多くの高齢者世帯が対象となるため、「高齢者向け給付金」というイメージが強いかもしれません。
この支援の最大の目的は、今まさに直面している物価高から日々の暮らしを守ることです。光熱費や食費の値上がり分を少しでも補填し、生活基盤が揺らぐことを防ぐための、いわば「生活防衛」のための支援と言えるでしょう。
- 目的:現在の生活費の負担軽減(生活防衛)
- 性格:緊急的、セーフティネット的
- 対象:所得が低い世帯(住民税非課税世帯など)
子育て世帯向け給付金:「未来への投資」としての支援
一方、子育て世帯向けの給付金は、現在の生活支援という側面に加え、「未来への投資」という性格を併せ持っています。
子育てには、食費や教育費、医療費など、継続的にお金がかかります。こうした経済的負担を社会全体で軽減し、「子どもを産み、育てやすい」環境を整えることは、次代を担う子どもたちの健やかな成長を支えるだけでなく、社会の活力となる少子化対策にも繋がります。
事実、大田区の出生数は長期的に減少傾向にあります。例えば、10年前の2015年には年間約6,800人の新しい命が区内で誕生していましたが、昨年2024年には約5,900人まで減少しています。この状況に歯止めをかけるためにも、子育て支援は待ったなしの課題なのです。
- 目的:子育てに伴う経済的負担の軽減、少子化対策(未来への投資)
- 性格:継続的、子どもの成長支援
- 対象:子どもがいる世帯(所得制限がある場合とない場合がある)
このように、どちらも区民の生活を支える重要な給付金ですが、その根底にある目的や社会的な役割が少し異なっているのです。
過去から現在へ:給付金制度の変遷
給付金という支援策は、ここ数年で大きく変化してきました。
過去:コロナ禍の「一律給付」
最も象徴的だったのは、2020年の「特別定額給付金」です。これは、所得や年齢に関わらず、国民一人ひとりに一律10万円が支給されたものでした。目的は、感染症拡大による経済活動の停滞に対し、家計を支援すると同時に、消費を促して経済を活性化させることでした。
この一律給付は、全国民が等しく対象となる分かりやすさがあった一方で、「本当に困っている人にもっと手厚く配分すべきでは」「貯蓄に回り、消費喚起の効果は限定的だったのでは」といった様々な議論も呼びました。
現状:物価高騰対策としての「ターゲットを絞った給付」
その後の給付金は、こうした議論を踏まえ、より支援が必要な層にターゲットを絞った形へと変化しています。それが、現在主流となっている「住民税非課税世帯」を対象とした給付金です。
物価高騰の影響は、所得が低い世帯ほど家計に占める食費や光熱費の割合(エンゲル係数など)が高いため、より深刻になります。そのため、支援の緊急性が高い世帯に集中的に給付を行うことで、政策の効果を高めようという狙いがあります。
大田区でも、国の⽅針に基づき、これまで1世帯あたり3万円、7万円といった給付金や、低所得の子育て世帯に児童1人あたり5万円を加算する「こども加算」などを実施してきました。2025年(令和7年)度においても、新たな物価高騰対策として、住民税非課税世帯などを対象とした給付金が予定されています。
浮き彫りになる課題や問題点
しかし、こうした給付金制度も、決して万能ではありません。区議会議員として区民の皆様と接する中で、いくつかの課題も見えてきています。
- 制度の複雑さと「分かりにくさ」
国の経済対策が次々と打ち出される結果、給付金の種類が増え、「自分がどの給付金の対象なのか分からない」「申請方法が複雑で難しい」というお声が多く寄せられます。 - 支援が届かない「制度の狭間」
現在の制度は「住民税非課税世帯」が主な対象ですが、課税世帯であっても、ギリギリの生活を送っている方々も大勢いらっしゃいます。こうした「制度の狭間」に置かれた方々への支援は、常に大きな課題です。 - 自治体の事務的な負担
給付金の支給業務は、対象者の抽出から振り込みまで、膨大な事務作業を伴います。迅速かつ正確な支給が求められる一方で、区職員の負担が増大しているのも事実です。 - 一過性の支援で終わってしまう危険性
現金給付は当座の生活を支える上で非常に有効ですが、根本的な解決には繋がりにくい側面もあります。中長期的な視点での政策が不可欠です。
これらの課題に対し、私たち議会としても、区民の皆様に分かりやすく情報をお届けする広報のあり方や、申請手続きの簡素化、そして給付金だけに頼らない恒久的な支援策の充実などを、区に対して強く求めていく必要があります。
大田区の未来と支援のあり方
最後に、私たちのまち、大田区の未来像と、これから求められる支援のあり方について、具体的なデータを見ながら考えてみたいと思います。
人口データから見る大田区の未来
まず、現在の大田区の人口構造を見てみましょう。(2025年9月時点の推計値)
- 総人口:約74万人
- 年少人口(0~14歳):約8.7万人(11.8%)
- 生産年齢人口(15~64歳):約48.7万人(65.8%)
- 老年人口(65歳以上):約16.6万人(22.4%)
現在、区民の約4.5人に1人が65歳以上の高齢者という状況です。そして、この割合は今後さらに上昇していくことが確実視されています。以下の表は、大田区の人口構成の推移と将来推計です。
年代 | 年少人口(割合) | 生産年齢人口(割合) | 老年人口(割合) |
2015年(過去) | 12.5% | 65.5% | 22.0% |
2025年(現在) | 11.8% | 65.8% | 22.4% |
2035年(未来推計) | 11.0% | 63.0% | 26.0% |
2045年(未来推計) | 10.7% | 59.1% | 30.2% |
(出典:国立社会保障・人口問題研究所の推計等を基に作成) |
この推移が示す未来は明らかです。
下のグラフが示すように、社会を支える生産年齢人口の割合が減少していく一方で、社会的な支えを必要とする老年人口の割合が急速に増加していきます。2035年には区民の4人に1人以上が、2045年には約3.3人に1人が高齢者となる見込みです。
これは、年金や医療、介護といった社会保障制度の維持にとって、非常に大きな挑戦となります。
未来から逆算して「今」を考える
この人口構造の変化という大きな流れの中で、これからの支援のあり方を考えなければなりません。一過性の現金給付はもちろん重要ですが、それだけでは未来の社会保障を支えることはできません。私は、今後の支援は2つの柱で進めるべきだと考えています。
第一の柱は、持続可能なセーフティネットの再構築です。
高齢者支援で言えば、給付金だけでなく、介護予防や健康寿命を延ばすためのプログラムを充実させること、地域での見守り体制や交流の場を強化し、孤立を防ぐことなどが挙げられます。
第二の柱は、未来への積極的な投資です。
子育て支援は、まさにこの柱の根幹をなします。子どもが増え、若者が定住したいと思える魅力的なまちをつくることが、将来の税収を確保し、ひいては高齢者を含む全ての区民を支える力に繋がるのです。
短期的な「生活防衛」のための給付と、中長期的な「未来への投資」としての支援。この両輪をバランスよく、そして力強く回していくことが、これからの大田区の区政に求められる最も重要な役割だと、私は確信しています。
まとめ
本日は、大田区の給付金制度について、その背景から課題、そして未来への展望までお話しさせていただきました。
- 給付金の背景:コロナ禍に続く物価高騰から、特に影響の大きい低所得世帯の生活を守るため。
- 支援の違い:高齢者・低所得者向けは「現在の生活防衛」、子育て向けは「未来への投資」という側面を持つ。
- 課題:制度の複雑さや、支援の狭間、一過性の支援になりがちといった問題点がある。
- 未来への展望:人口データが示す高齢化の進展を見据え、短期的な給付金と、持続可能なセーフ
ティネットの構築、そして未来への投資としての支援を両立させていく必要がある。
給付金は、区民の皆様の暮らしに直結する重要な政策です。だからこそ、私たち議員は、その一回一回の支給に責任を持つと同時に、その先にある大田区の未来を常に見据え、より良い制度設計と持続可能な社会の実現に向けて、議論を尽くしていかなければなりません。
私、佐藤なおみも、4人の子育てを経験した母として、そして区民の皆様の声を聴く議員として、誰一人取り残されることのない、温かい大田区を目指して活動を続けてまいります。
何か疑問点や不明な点がございましたら、いつでもお気軽に、佐藤なおみまでご相談ください。
皆様の声を、区政に届けるのが私の仕事です。
大田区議会議員 佐藤なおみ
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