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大田区いじめ防止対策推進条例をただの「お守り」にしないために。施行4年、今すべきこと

こんにちは。大田区議会議員の佐藤なおみです。

大田区の「いじめ防止対策推進条例」が施行されてから、4年の歳月が流れました。

一人の議員として、そして、いじめを経験した一人の当事者として、この条例の制定に注目していた者として、この4年間は決して短い時間ではありませんでした。条例ができたことで、学校現場では「いじめは組織で対応する」という意識が根付き、いじめ問題対策委員会という第三の目も機能し始めました。これは、間違いなく大きな前進です。

しかし、今、私たちは自問すべき時が来ています。

「条例がある」という安心感に浸ってはいないか。

この条例が、机の引き出しにしまわれた、ただの「お守り」になってはいないだろうか、と。

 

施行から4年で見えてきた「現実」と「課題」

この4年間で、いじめの態様はさらに巧妙化しています。AIを使ったなりすまし、匿名性の高いアプリでの陰湿な嫌がらせなど、私たちが制定当時に想定していた以上の速さで、子どもたちを取り巻く環境は変化しています。

そして何より、私が最も懸念しているのは、ルールの「形骸化」です。

対策会議は開かれているか? はい、開いています。

学校方針は策定されているか? はい、されています。

報告書は提出されているか? はい、されています。

しかし、その一つひとつのアクションに、本当に「子どもの心と向き合う」という魂は宿っているでしょうか。チェックリストを埋めることが目的になってはいないでしょうか。

相談窓口があっても、報復を恐れて声を上げられない子どもの現実は、4年前と何ら変わっていません。この「声なき声」との距離を埋められない限り、私たちは本当の意味で条例を機能させているとは言えないのです。

 

条例を「生きた道具」にするための、3つのアクション

では、どうすればいいのか。私は、条例を「お守り」から、子どもたちを現実に守る「生きた道具」へと変えるために、今、具体的な3つのアクションが必要だと考えています。

  1. 定期的な「実態検証」と「対話」の仕組みを

条例が本当に機能しているか、定期的に子どもたち自身の目線で検証する仕組みが必要です。記名式のアンケートだけでなく、子どもたちが本音を話せる匿名のチャット調査や、NPOなど外部の専門家を交えたグループインタビューの機会を設けるべきです。

「このルール、本当に役に立ってる?」と、主役である子どもたち自身に問いかけ、その声を条例の運用改善に反映させていく。このサイクルを制度化することが急務です。

  1. 現場の知識を「アップデート」し続ける

新しいネットいじめの手法、子どものメンタルヘルスに関する最新の知見など、教職員や私たち保護者が学ぶべきことは常に更新されています。条例で定められた研修を一度きりの義務で終わらせず、eラーニングなどを活用して、誰もが継続的に知識をアップデートできるプラットフォームを区が主導して作ることを心がける必要があると考えています。

  1. 相談への「ハードル」を徹底的に下げる

「相談しなさい」と待っているだけでは、子どもは来てくれません。こちらから出向く必要があります。例えば、スクールカウンセラーが特定の相談室にいるだけでなく、校内を積極的に巡回したり、子どもたちが日常的に使う学習用タブレットに匿名でアクセスできる相談ツールを標準装備したりと、相談を「特別なこと」から「日常の一部」に変える工夫がもっと必要だと思います。

条例は、交わすこと以上に、守り続けることの方がずっと難しい。

この条例を、もう一度、机の引き出しから取り出し、そして、そこに書かれた文字の一つひとつを、私たち大人の具体的な行動によって、本当に困っているあの子の元へ届ける。

議員として、そして、子どもの頃のあの日、いじめにあっていた当事者として。

今後もこの条例が施行して終わるだけの紙切れにならないよう注視していきたいと思います。

大田区議会議員 佐藤 なおみ

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