皆さんこんにちは。大田区議会議員の佐藤なおみです。
いつも区政に対し、温かいご支援と貴重なご意見をいただき、心より感謝申し上げます。
さて、皆さんは「自転車」に毎日乗りますか?
通勤・通学、お子さんの送り迎え、お買い物。
ここ大田区は比較的平坦な道も多く、自転車は私たち区民の生活に欠かせない、最も身近な「足」ですよね。
その一方で、最近、こんなニュースを耳にして、不安や疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
・違反したら『反則金(罰金)』が科されるようになる
・えっ、自転車で罰金? ちょっと厳しすぎない?
・毎日のことだから、うっかり違反してしまいそう…
・でも正直、危ない運転の自転車が増えて、ヒヤヒヤすることも多いよね
・これで事故が減るなら、賛成かもしれない
賛否両論、さまざまな声が私の元にも届いています。
この制度は、私たちの生活に直結する非常に大きな変化です。
だからこそ、私たちは「なんとなく怖い」「面倒だ」と目をそらすのではなく、「なぜ今、この制度が必要なのか?」「私たち大田区民の生活はどう変わるのか?」「そして、本当に安全なまちは実現できるのか?」を、真正面から考える必要があります。
今日は、この「自転車の青切符(交通反則通告制度)」について、制度が作られるまでの背景から、私たち大田区が抱える現状、そして今後私たちが取り組むべき課題まで、佐藤なおみの視点から解説していきたいと思います。
少し長い記事になりますが、皆さんの不安を安心に変え、そして「安全で住みやすい大田区」を一緒に作るための大切な情報です。ぜひ、最後までお付き合いください。
1.制度構築までの道のり ~なぜ今、「自転車」なのか?~
まず、なぜ今になって、これまで比較的「自由」だった自転車に、厳しいルール(反則金)が導入されることになったのでしょうか。そこには、切実な背景があります。
(1) 自転車利用の爆発的な増加
皆さんも肌で感じている通り、自転車を利用する人はここ数年で急激に増えました。
・環境意識の高まり(SDGs、脱炭素)
・コロナ禍による密を避ける移動手段としての見直し
・シェアサイクルの普及(大田区内でも、駅前や公園などでよく見かけるようになりました)
・フードデリバリーサービスの浸透
自転車は、手軽で、環境に優しく、健康にも良い、まさに「時代のニーズに合った乗り物」として、その役割がますます大きくなっています。
(2) 深刻化する「自転車関連事故」
しかし、光が強くなれば、影も濃くなります。
利用者が増えれば、残念ながら事故も増えます。
全国的に、交通事故全体に占める自転車関連事故の割合は、年々増加傾向にあります。警察庁の発表でも、自転車が関係する事故は高止まりしており、特に深刻なのは以下の2点です。
歩道を猛スピードで走る自転車と歩行者が衝突し、歩行者が死亡したり、重い後遺障害を負ったりする痛ましい事故が後を絶ちません。自転車は、歩行者から見れば「凶器」にもなり得るのです。
自転車乗車中の死亡・重傷事故
自転車側の違反(信号無視、一時不停止など)が原因で、自動車と衝突し、自転車側が命を落とすケースも非常に多いのが実情です。
(3) これまでの「取り締まり」の限界
「じゃあ、今までは警察は何をしていたの?」という疑問もあるかと思います。
もちろん、これまでも自転車の危険な違反は「犯罪」でした。
しかし、制度上、非常に大きな壁があったのです。
自転車の違反は、自動車の「青切符(反則金)」のような軽い処分がなく、いきなり「赤切符(刑事罰)」の対象でした。刑事罰ということは、裁判所に出頭し、有罪になれば「前科」がつく、非常に重い処分です。
現場の実態
例えば「一時不停止」で、いきなり区民に「赤切符」を切り、前科をつけるというのは、あまりにも重すぎます。
そのため、警察官も現場では「指導・警告(イエローカード)」で済ませることがほとんどでした。
つまり、「厳しすぎる刑事罰(赤切IP符)」と「効果の薄い指導・警告」の二択しかなく、その中間の「実効性のある、適度なペナルティ」が存在しなかったのです。その結果、多くの人が「自転車はちょっとくらいルール違反しても、注意されるだけ」という意識になってしまい、危険な運転の抑止力として機能していませんでした。
(4) 法改正へ ~「指導」から「実効性ある抑止」へ~
この「制度の歪み」を解消し、重大事故を本気で減らすため、警察庁の有識者会議で長年議論が重ねられてきました。
そして、自動車やオートバイと同様に、比較的軽微な(しかし放置すれば重大事故につながる)違反については、刑事罰(前科)ではなく、反則金の納付で手続きを終えられる「交通反則通告制度(青切符)」を自転車にも導入すべき、という結論に至りました。
これを受け、2024年(令和6年)5月、ついに改正道路交通法が国会で可決・成立したのです。
(施行は、公布から2年以内、2026年までの予定とされています)
2.制度の理由と仕組み ~何が、どう変わるのか?~
では、新しく導入される制度の具体的な中身を見ていきましょう。
最も大切なことは、この制度の目的は「罰金を取ること(歳入確保)」では断じてない、ということです。
目的はただ一つ、「危険な違反を抑止し、悲惨な交通事故を未然に防ぐこと」です。
(1) 対象となるのは?
16歳以上 のすべての人です。
(原動機付自転車=原付の免許が取得できる年齢が基準とされました。高校生も対象となります)
対象となる違反
すべての違反が対象ではなく、「特に重大な事故につながるおそれのある、悪質・危険な違反行為」が対象となります。
法案では約112の行為(※成立時に精査)が挙げられていますが、代表的なものは以下の通りです。
・信号無視
・一時不停止(「止まれ」の標識がある場所)
・右側通行(逆走)
・歩道での徐行違反(歩行者優先義務違反)
・遮断機が下りた踏切への進入
・スマホ等を見ながらの「ながら運転」(※事故につながる危険を生じさせた場合)
・イヤホン等で大音量で音楽を聞くなど、安全運転に必要な音が聞こえない状態での運転
「傘さし運転」や「二人乗り」(※幼児用座席を除く)、「無灯火」なども、指導・警告の対象であり、悪質な場合は青切符の対象に含まれてくる可能性があります。
(2) 制度の仕組み(青切符の流れ)
自動車の青切符とほぼ同じです。
警察官が、上記の危険な違反(例:信号無視)を現認します。
自転車を停止させ、本人確認の上、「交通反則告知書(青切符)」と「反則金納付書」を交付します。
違反をした人は、指定された期間内(通常1週間程度)に、銀行や郵便局で反則金を納付します。
反則金を納付すれば、刑事手続き(裁判や前科)は免除され、すべて終了となります。
反則金の額は、まだ正式決定していませんが、原付バイクと同程度(5,000円~12,000円程度)になるのではないかと見られています。
もし、この反則金の納付を拒否し続けた場合は、従来通り「赤切符」と同じ刑事手続き(検察庁への送致、裁判)に移行することになります。
(3) 期待される効果
この制度により、
「注意されるだけなら、まあいいか」
という甘い意識がなくなり、
「信号無視をしたら、反則金を取られるかもしれない」
という意識が働くことで、危険な違反行為そのものが減少すること(=違反抑止効果)が期待されています。
また、警察官も「指導・警告」よりも一歩踏み込んだ「青切符の交付」という手段を得ることで、現場での取り締まりの実効性が高まると考えられています。
3.大田区の「現状」 ~私たちのまちは安全か?~
さて、ここからは、私たちの大田区に目を向けてみましょう。
全国的な話は分かりましたが、この大田区において、自転車の安全はどのような状況なのでしょうか。
(1) 自転車利用が「多すぎる」まち、大田区
冒頭でも触れましたが、大田区は自転車利用が非常に多いまちです。
坂道が少なく、自転車での移動が非常に楽です。
密集した市街地
蒲田、大森、糀谷、雑色、梅屋敷など、駅を中心とした商店街や住宅地が広がり、「ちょっとそこまで」の移動に自転車が最適です。
鉄道網の隙間
鉄道駅と駅の間が離れている地域(例:池上と西馬込の間、羽田方面など)では、自転車が重要な生活の足となっています。
多摩川サイクリングロード
レジャーやスポーツとしての利用者も都内随一です。
まさに「自転車都市・大田区」と言っても過言ではありません。
(2) 区民から寄せられる「ヒヤリ・ハット」の声
利用者が多いからこそ、危険な場面も多くなります。
私が日頃、区民の皆さんからお聞きする「ヒヤリ・ハット」事例は、枚挙にいとまがありません。
蒲田のアーケード商店街を、デリバリーの自転車が猛スピードで走り抜けていく。いつか子どもとぶつかるかと思うと怖くて歩けない
●大森在住・50代男性
大森の狭い一方通行の道を、平気で逆走してくる自転車が多くて危ない。車を運転している側も、まさか前から来るとは思っていない
●池上在住・40代女性
子どもを乗せて保育園に向かう途中、スマホを見ながらふらふら運転している自転車にぶつかられそうになった
●田園調布在住・60代男性
夜、無灯火で黒い服の自転車が交差点に飛び出してきて、もう少しで轢きそうになった
これらは、誰もが一度は経験したことのある「大田区の日常」ではないでしょうか。
警視庁の統計を見ても、大田区(蒲田署・大森署・池上署・田園調布署・大森海岸署・羽田空港署管内)では、自転車が関係する交通事故が、全交通事故の約4割を占める高い水準で推移しています。これは都内平均よりも高い状況です。
(3) これまでの大田区の取り組み(と、その限界)
もちろん、大田区も手をこまねいていたわけではありません。
・2023年4月からの「ヘルメット着用努力義務化」に伴う啓発キャンペーン
・自転車の通行空間を分かりやすく示す「矢羽根型路面表示(ナビマーク)」の設置
などを行ってきました。
しかし、これらの「ソフト面」での啓発だけでは、残念ながら危険な運転を根絶するには至っていません。
また、「矢羽根型表示」は、あくまで「ここを走ってください」という目印でしかなく、駐車車両があれば意味をなさず、自動車の圧力を感じる中で、多くの自転車が結局は歩道に逃げ込まざるを得ない、という実態があります。
4.問題点、課題点 ~制度導入への「本当の懸念」~
青切符制度の「目的」は理解できました。大田区の「現状」も分かりました。
では、この制度を導入すれば、すべてが解決し、大田区はバラ色の安全なまちになるのでしょうか?
私は、そう単純ではないと考えています。
むしろ、この制度を「絵に描いた餅」にしないため、そして「単なる区民いじめ」にしないために、私たちが乗り越えなければならない、重い課題が山積しています。
(1) 最大の課題:自転車が「走る場所」がない
これが、私、佐藤なおみが考える最大の問題点です。
区民の皆さんから寄せられる、最も切実な声でもあります。
「車道の左側を走れと言われても、怖くて走れない」
大田区の主要道路(環七通り、環八通り、第一京浜、産業道路、池上通りなど)は、交通量が非常に多く、大型トラックも猛スピードで走っています。そのすぐ横を走るのは、命がけです。
路肩には、違法駐車・荷下ろしの車両がびっしりと並んでいます。これを避けるためには、車線の真ん中近くにはみ出すしかなく、後続車からクラクションを鳴らされることも日常茶飯事です。
一本入った生活道路は、道幅が狭く、車と自転車と歩行者が入り乱れ、かえって危険です。
結局、多くの人が「危ないと分かっていても、歩道を走るしかない」「ルール違反と知りつつ、安全のために逆走(右側通行)してしまう」という、苦渋の選択を迫られているのが実態ではないでしょうか。
「走るべき場所」をきちんと整備せず、ルール違反だけを取り締まるのは、あまりにも理不尽であり、順序が逆だ――。私は、この区民の皆さんの怒りや疑問は、至極もっともだと考えています。
(2) ルール自体の「周知不足」と「複雑さ」
皆さんは、自転車のルールをすべて正確に説明できますか?
『自転車通行可』の標識がある歩道は、例外的に通っても良い
その場合でも、歩道では『車道寄りを徐行』し、歩行者の通行を妨げる場合は『一時停止』しなければならない
特に、この「歩道の走り方」は非常に複雑です。
こうしたルールを、免許を持っていない高校生や、何十年も前に免許を取ったきりの大人が、どれだけ正確に理解しているでしょうか。
ルールを知らないまま、いきなり「違反だ、反則金だ」と言われても、納得できるはずがありません。
(3) 取り締まりの「公平性」は保たれるのか?
次に懸念されるのが、取り締まりの「現場」です。
・言いやすい学生や主婦、高齢者ばかりがターゲットにされるのではないか?
・駐車車両を放置しているのに、それを避けた自転車だけが取り締まられるのは不公平だ
こうした「取り締まりの公平性・透明性」に対する不信感が生まれれば、制度そのものへの信頼が失われてしまいます。
(4) 高齢者の「移動の足」を奪わないか?
大田区は高齢化率も高いまちです。
車は返納したけれど、自転車ならまだ乗れる、という高齢者の方にとって、自転車は病院や買い物に行くための「命綱」です。
もちろん、高齢者の危険な運転(ふらつき、逆走、信号無視)も大きな問題です。しかし、取り締まりを強化するだけで、もし高齢者が自転車に乗ることを諦め、外出できなくなってしまったら…。それは「安全」とは別の、「孤立」や「健康悪化」という新たな社会問題を生み出してしまいます。
5.今後はどうなる?
では、これらの山積する課題を前に、私たちは何をすべきでしょうか。
制度導入(2026年予定)まで、残された時間は長くありません。
私、佐藤なおみは、この青切符制度の導入を、「罰則強化」のピンチとしてではなく、「大田区の交通環境を根本から見直す最大のチャンス」として捉え、区議会議員として以下の点を働きかけて行けたらと考えております。
(1) 【最優先課題】「自転車が安全に走れる場所」の早急な整備
ルールを守れ、と言う前に、ルールを守れる環境を作るのが行政の最大の責務です。
車道にただ矢羽根(ナビマーク)を描くだけでは不十分です。縁石やポールなどで物理的に分離された「自転車専用レーン」を、主要道路(特に駅に向かう道、学校の通学路)に優先的に整備するよう、予算の重点配分を強く求めます。
「車道 VS 自転車」からの脱却
車線を減らしてでも自転車レーンを作る、という「道路空間の再配分」に向けた議論を、区と警察を巻き込んでスタートさせます。
駐車車両対策の徹底
警察と連携し、自転車レーン上や路肩の違法駐車の取り締まりを徹底するよう、区議会からも強く要請します。環境整備と取り締まりはセットです。
(2) 「知らなかった」をゼロにする。徹底した周知と教育
ルールを知らなければ、守りようがありません。
広報おおた、区のHP、SNSはもちろん、町会・自治会、シニアクラブ、保育園・幼稚園の保護者会など、あらゆるチャネルを使って、「なぜ危ないのか」が伝わる形でのルール周知を徹底させます。
「大人」と「高校生」への安全教育の義務化
小中学生だけでなく、免許を持っていない高校生や、ルールの知識が曖昧になりがちな大人世代(企業向け、一般区民向け)に対する実践的な安全教室を、区が主導して大幅に増やすよう求めます。
(3) 警察との連携強化と「透明性」の確保
区民の不安を払拭するため、取り締まる側との連携も欠かせません。
大田区議会として、地元警察署(蒲田署、大森署など)に対し、制度の趣旨(=事故抑止)を逸脱した過度な取り締まりにならないよう、また、公平・公正な運用がなされるよう、対処できたらと思います。
「ヒヤリ・ハットマップ」の活用
区民の皆さんから寄せられる「危険箇所」の情報を、警察と区が共有し、「どの場所の」「どの違反」を優先的に取り締まるべきか、客観的なデータに基づいた運用を求めたいと思います。
(4) 高齢者など「交通弱者」へのセーフティネット構築
取り締まり一辺倒では、弱い立場の人を追い詰めるだけです。
自転車の安全運転が難しい高齢者に対しては、代わりとなる移動手段(コミュニティバス「たまちゃんバス」のルート・便数拡充、デマンド型交通の導入検討、シルバーパスの活用促進など)をセットで提案し、予算化を求めていきます。
ヘルメット購入補助の実現
(2023年の努力義務化の際、大田区では実現しませんでしたが)この制度導入を機に、命を守る「ヘルメット」の購入費用について、区独自の補助制度を設けるよう、再度強く要求します。
6.まとめ 「罰則」を「安全な未来」へのチャンスに変えよう
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
「自転車の青切符」制度。
それは、一見すると「厳しくなる」「面倒になる」というネガティブな側面に目が行きがちです。
しかし、私は、これは「大田区の交通安全意識が、第二ステージに進むための産みの苦しみ」なのだと信じています。
これまで「歩行者」でも「車」でもない、曖昧な存在だった自転車が、この法改正によって、良くも悪くも「責任ある車両」として、社会的な位置づけを明確にされることになります。
私たちが目指すべきは、「罰金が怖いから、ビクビクしながら自転車に乗るまち」ではありません。
誰もが、当たり前にルールを守り、自転車も、歩行者も、自動車も、お互いを尊重しあいながら安全に共存できるまちであるはずです。
そのためには、私たち一人ひとりが、「罰金が嫌だから」ではなく、「自分と、自分の大切な家族、そして見知らぬ誰かの命を守るために」ルールを守る、という意識改革が必要です。
そして、行政(大田区)には、「ルール違反だ」と罰する前に、誰もが安全にルールを守れる「道路環境」を整備するという、最も重い責任があります。佐藤なおみは、区議会議員として、皆さんが「このまちなら安心して自転車に乗れる」と心から思える大田区の実現に向け働いてまいります。
この制度導入を「罰則強化」というピンチではなく、「大田区の道路環境を根本から見直す最大のチャンス」と捉え、皆さんと一緒に、安全な未来を作っていきたいと願っています。
・こういう整備をしてほしい
皆さんの現場の声を、ぜひ私、佐藤なおみにお寄せください。
その一つ一つの声が、大田区を動かす大きな力となります。
【ご注意】
この記事は、2024年5月に成立した改正道路交通法に基づき、2025年10月現在の情報と一般的な見通しを佐藤なおみの見解としてまとめたものです。反則金の具体的な額や、施行日(2026年までに施行予定)など、詳細な運用については、今後、国の政令等で正式に決定されます。
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