大田区民の皆さま、いつも政策に対するご理解ありがとうございます。
大田区議会議員の佐藤なおみです。
日々、大田区内で「犬を飼えなくなった」「多頭飼育が行き詰まった」といったご相談を受けています。例えば、高齢になって施設に入ることになった、子どもが生まれて手が回らなくなった、急な病気やけがで世話ができなくなった、経済的に続けられなくなった――理由はさまざまです。
それでも飼われていた犬には、飼い主さんとともに過ごした時間があり、かけがえのない命があります。飼えなくなった=「手放してしまおう」ではなく、犬も人も安心できる手立てを一緒に考えていきたいと思います。
1.多頭飼育崩壊という現実
近年、いわゆる「多頭飼育崩壊」の事例が全国的に、そして地域でも報告されています。多頭飼育崩壊とは、飼い主が自身で適切に管理できる頭数や環境の限界を超えて犬や猫を飼い続けた結果、給餌・排泄の処理・清掃・医療・散歩などの世話が行き届かなくなり、生活環境や動物の健康、さらには周囲の衛生や近隣環境にも深刻な影響が及ぶ状態を指します。
東京都内でも、犬を劣悪な環境で衰弱させたとして飼い主が動物愛護法違反の疑いで逮捕されたという報道がありました。こうした事例の背景には、必ずしも飼い主の「悪意」だけでなく、次のような事情が重なっているケースも少なくありません。
* 飼い主自身が高齢、病気、障がい、または社会的に孤立した状況にある。
* コロナ禍など生活環境の変化から「家にいる時間が増えたので飼おう」と安易に飼い始め、結果的に管理が追いつかなくなる。
* 適正な飼育に必要な知識や環境(住居、散歩スペース、近隣との関係など)が十分でない。
このまま放置すれば、犬にとっても飼い主さんにとっても、そして近隣の方々や地域環境にとっても深刻な問題になってしまいます。例えば、鳴き声・臭い・糞尿・感染症・逃走・咬傷事故など、飼育環境と地域生活のバランスがくずれることで起きるトラブルも少なくありません。そこで、まずは「飼えなくなったら相談できる」という選択肢を、もっと多くの方に知っていただきたいと思います。
2.区内・地域での現状と課題
私が相談を受ける中で特に多いのは、「生活環境が変わって犬を飼い続けることが難しくなった」というものです。たとえば、以下のようなケースがあります。
* 出産・育児を機にこれまで毎日散歩させていた時間が取れなくなり、「子どもとの時間優先で犬の運動が難しい」と悩まれる。
* 仕事環境の変化(転勤・在宅からオフィス復帰など)や冠婚葬祭・長期入院などで「今後の世話に不安」が生じる。
* 経済的な負担増(医療費・餌代・トリミング・ペットシッターなど)により、飼育を続けられるかどうか迷われる。
* 引っ越し・住居変更・共同住宅への移転などで「ペット可ではない」「周囲とのトラブルが心配」という理由で飼育継続が困難に。
これらの背景をみると「飼えなくなった」=「飼い始めた時より状況が変わった」というものがほとんどです。ペットは「家族の一員」ですが、生活環境・社会的環境も変化します。変化に応じて「飼い続けるかどうか」を考えるのは、飼い主としてごく自然なことです。
ただ、そこで「仕方なく手放す」「放棄してしまう」「飼育が破綻してしまう」という選択肢が取られてしまうことが危険だと考えております。先述の多頭飼育崩壊に至るケースを見ても、飼い主さんの事情が複雑に絡んでいることが多く、単に「頭数が多くなった」だけでは説明できない背景があります。また、大田区としても例えば 大田区のホームページでは「ペットの多頭飼育を始める前に」と題して次のように記しています。
飼っているペットの数が多くなると給餌や散歩などの世話、首輪やリードなどのペット用品、ワクチン代などの医療費等が、頭数に比例して増えるだけではありません。飼育する手間や費用は、頭数の何倍にもなり、1頭で飼っている場合と違った配慮が必要になります。このように「頭数が増えたら手に負えなくなる」ことを大田区自身が警鐘を鳴らしているのです。
3.区・自治体・ボランティアの取り組み
では、こうした課題に対してどのような取り組みが区・自治体、ボランティア団体において進められているのでしょうか。
(1)適正飼養・啓発活動
東京都では、動物愛護管理法改正を受けて、適正飼養・終生飼養・譲渡促進・飼い主不明動物の管理等を推進しています。大田区でも、区の「動物愛護その他」ページには以下のようなメニューが掲げられています。
* ペットの多頭飼育を始める前に(先述)
* 一人暮らし・シルバー世代の方へ/見守る介護職員の方へ(飼育継続支援の視点)
こうした情報発信により、「飼う前」「飼っている間」「飼えなくなりそうな時」の3段階で適切に備えることが呼びかけられています。
(2)多頭飼育崩壊・過剰繁殖対策
前述の通り、多頭飼育崩壊の背景には、飼い主の生活困窮・孤立・情報欠如などが深く関係しています。ボランティア団体・NPO・自治体の連携によって、支援・相談窓口・意見交換会などが設けられています。例えば、飼育困難になりそうな方への早期相談、地域福祉との連携、動物行政と社会福祉が横串で対応するという動きです。
(3)保護・譲渡/飼い主不明動物対応
飼い主不明の犬・猫や、迷子・放棄動物への対応も重要です。東京都・大田区では、収容・保護・治療・譲渡といった機能を整備しており、例えば「飼い主がいない猫」対策として、地域自治会・町会が主体となった“地域猫活動”も大田区で支援対象になっています。
(4)地域住民・近隣との共生支援
ペットを飼うということは、飼い主だけの責任ではなく「近隣」「地域」との関係性も関わります。鳴き声・臭い・排泄物・散歩マナー・災害時の避難・感染症の予防など、多岐にわたり、環境省が策定したガイドラインにも「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン」が紹介されており、飼い主・地域・行政の三者が協働する必要性が記されています。
このように「犬を飼っている/飼おうとしている」皆さまにとっても、飼えなくなった・飼育が困難になったと感じたときにまず相談できる窓口・ネットワークを知っておいていただくことが大切だと思います。
4.なぜ“飼えなくなった”時に相談すべきか
飼えなくなったと感じたとき、相談をためらう理由として「どうしていいか分からない」「申し訳ない」「放っておいても誰かが何とかしてくれるだろう」という思いがあるかもしれません。しかしこの段階で一歩を踏み出すことが、犬・飼い主・地域にとって最も早く、最も正しい対応につながります。以下にその理由を整理します。
(1)飼い主さん・犬の将来を守るため
犬は長寿犬種であれば10年・15年と生きることもあります。子どもが生まれた、転勤があった、住居が変わった、高齢になったなど、その時点で「今後も適切に世話を続けられるか」を考えることは飼い主としての責任です。もし「このまま飼い続けると、将来必ず手が回らなくなる」と感じたら、早めに相談し支援を得ることで、犬にとっても安心できる環境を確保できます。
(2)多頭飼育・放置・遺棄という最悪の事態を防ぐため
飼育困難をそのまま放置すると前述のような多頭飼育崩壊や、衛生・近隣トラブル・犬の健康被害・虐待・遺棄といった最悪のケースに発展する恐れがあります。早期に手を打つことで飼い主さんも犬も、そして近隣・地域も被害を回避できます。
(3)地域共生を守るため
地域でペットと暮らすということは、家族だけで完結する話ではありません。散歩・排泄・鳴き声・臭い・ご近所との関係・災害時の避難など、地域として備えるべき要素があります。飼育困難になると、こうした“地域とのズレ”がトラブルになりやすいため、早めの相談が有効です。
(4)制度・支援を活用できるため
相談窓口・助成制度・譲渡制度・保護団体との連携など、飼えなくなった時にも「すぐに手を離す」のではなく「次の適切な手を打つ」道があります。例えば、大田区では「ペット・動物死体の引取り」や「マイクロチップ登録」「多頭飼育を始める前に」の案内など、動物愛護関連の整備が進んでいます。つまり飼い続けるかどうか迷った時点で、ご相談いただくことで「どうしたら良いか」を一緒に考えられるのです。
5.私の活動と、皆さまへの呼びかけ
私は区議会議員として地域の皆さまの声・動物の命・地域生活の調和を重視して活動しています。動物愛護・地域共生という観点から、次のような取り組みを進めています。
* 「ペットの多頭飼育を始める前に」という啓発資料の普及、飼育数や飼育環境について早期に考える仕組みづくりを応援しています。
* 「生活困窮者ペット飼育支援/過剰繁殖対策」という視点で、飼えなくなった方・飼育困難になった方への支援体制を地域の社会福祉団体とも連携して注視しています。
大田区議会では、動物愛護条例・地域共生条例・高齢者支援・福祉支援などとの横断的な取り組みを提案・議論してまいりました。そして皆さまにお願いしたいことは、ご自身・ご家族・ご近所・そしてペットが安心して暮らせる環境を一緒につくることです。
もし今、ご自分や身近な方の飼育に「少し不安」を感じていらっしゃるならどうか早めにご相談ください。「手遅れになる前に」「飼えなくなってからでは遅い」――そんな思いで私も区政の場で声を上げています。
6.具体的な相談・支援の流れ
ここでご相談から支援・解決に至る流れを簡単に整理します。
1. 飼育に不安・困難を感じたらまず私までご相談ください。理由は何でも構いません(高齢化・引っ越し・子どもの誕生・経済・疾病・住環境変更など)。
2. それを受け、私から区の保健衛生・環境衛生・動物愛護担当部署、地域のボランティア団体・NPO、社会福祉機関と連携します。
3. 状況に応じて、以下のような手立てを検討します。
* 飼育数・犬種・住環境・近隣関係・散歩環境・医療費等の見直し(多頭飼育崩壊予防)。
* 飼い主さんの生活支援(高齢・介護・経済的支援など)と犬の世話を両立するための福祉連携。
* 引っ越し・住環境変更に伴う飼育継続の可否・近隣トラブル予防。
4. 必要であれば飼育環境改善・譲渡手続き・マイクロチップ登録・終生飼養についての情報提供を行います。
5. 最終的には犬も飼い主さんもそして地域も安心できる環境を目指します。
このような流れを知っておくだけでも、いざという時に「どうしたらいいか分からない」という不安が軽くなるのではないでしょうか。
7.「どうしても手放さなければならない」という場合でも
「飼えなくなった、手放さなければならない」と判断された場合でも、次の点をぜひご検討頂けたらと思います。
感情的に「もういいや」と諦めず、できるだけ早く相談しましょう。どうにかなるという感覚で放置すると、犬にとっても飼い主さんにとっても大きな負担・後悔につながります。譲渡を検討する際には、生体販売のような流れではなく、きちんと犬の性格・健康・飼育環境を把握して引き継ぐところを探しましょう。
犬を迎えた時に「終生飼養」を覚悟されていたと思います。飼えなくなった=終わりではなく、「次にどうするか」を共に考えることが、飼い主さんとしての責任です。近隣・地域との関係も考えてください。犬の散歩・騒音・脱走・排泄物などがトラブルになることを未然に防ぐため、環境調整・受入れ先との調整が重要です。
また、飼い主さんご自身の生活環境をどう整えるかも大切です。高齢化・体力低下・ケガ・病気・経済的変化などが犬を飼ううえでのハードルとなっている場合は、福祉・地域包括支援・介護・住環境支援などもセットで考える必要があります。
8.最後に ―どうぞお気軽にご相談ください
犬との暮らしは飼い主さんだけで築くものではありません。地域・住環境・近隣・行政・ボランティア、さらにはご自身の生活環境変化とも深く関わっています。「飼えなくなったかもしれない」と思ったその時が実は転機です。早めに手を打つことで犬も飼い主さんも、そして地域も安心して暮らせる環境を守ることができます。
どうかお一人で悩まずどんなささいな不安でも構いません。散歩がきつくなった、体力が落ちた、子どもができて手が回らない、住環境が変わったという理由でも構いませんので佐藤なおみまでお気軽にご相談ください。
一緒に「犬も人も笑顔で暮らせる大田区」をつくっていきましょう。
大田区議会議員 佐藤 なおみ
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