大田区お役立ち情報

愛犬・愛猫との暮らしから考える大田区のペット火葬問題。

こんにちは。大田区議会議員の佐藤なおみです。

我が家のリビングは、いつも賑やかです。ソファで丸くなる2匹の猫と、足元で尻尾を振る愛犬。彼らは、言葉を話すことはありませんが、その温かい存在感で、私たち家族の日常を、かけがえのない喜びに満ちたものにしてくれています。

ペットと暮らす多くの方が、同じように感じていらっしゃるのではないでしょうか。彼らはもはや「ペット」という言葉では収まりきらない、紛れもない「家族の一員」です。

しかし、この愛おしい日々の中で、私は時々、ふと胸が締め付けられるような想いに駆られます。それは、人間よりもずっと速く時を駆け抜けていく、この子たちの「いのち」に思いを馳せる時です。いつか必ず訪れる、お別れの日。その最期の瞬間を、私たちはどのように迎え、そして、どのように見送ってあげられるのだろうか──。

この問いは、単なる感傷ではありません。今、大田区でペットと暮らす多くのご家庭が、愛する家族との最後の別れの場面で、予期せぬ困難や深い悲しみに直面しているという、あまり知られていない現実があります。

今日は、一人の飼い主として、そして大田区議会議員として、この「ペット火葬問題」について、皆様と一緒に考えたいと思います。

(第一章) 法律の壁と、「家族」の想いのギャップ

この問題を語る上で、まず皆様に知っていただきたい、衝撃的な事実があります。それは、日本の法律(廃棄物処理法)において、亡くなったペットの亡骸はどのように扱われるか、ということです。

法律上、彼らは「一般廃棄物」、つまり家庭から出るゴミと同じ区分なのです。

この冷たい法律の条文と、私たちの心の中にある「この子は家族なのに」という温かい想いとの間には、あまりにも大きく深い溝があります。

もちろん、大田区役所も、亡くなったペットをゴミとして扱うわけではありません。飼い主からの依頼があれば、有料で亡骸を引き取り、提携する施設で他の動物たちと一緒に火葬(合同火葬)してくれます。これは、行政として最低限の弔いの形を保障する、重要な役割です。

しかし、「他の子と一緒ではなく、自分の子だけをきちんと火葬して、お骨を拾ってあげたい」と願うのが、多くの飼い主の自然な感情ではないでしょうか。その想いに応えるのが、民間のペット火葬・葬儀会社の役割です。しかし、ここにこそ、今、大きな問題が潜んでいるのです。

(第二章) 選択肢が少ない、大田区の現実

愛するペットを、人間と同じように個別で火葬してあげたい。そう願った時、大田区の飼い主は厳しい現実に直面します。

それは、近隣で安心して任せられる固定のペット火葬施設が極めて少ないということです。人間の火葬場と違い、ペットの火葬施設には公営のものがほとんどなく、民間施設も建設には周辺住民の理解など高いハードルがあり簡単には作れません。

結果として、大田区の飼いG主が選べる選択肢は、主に以下の二つに限られてしまいます。

1. 移動火葬車(訪問火葬サービス)

火葬炉を搭載した車が自宅まで来てくれ、その場で火葬してくれるサービスです。自宅で最期のお別れができる利便性から、利用する方が増えています。しかし、その手軽さの裏で、

「住宅街で火葬車の煙や臭いが…」という、近隣住民とのトラブル
路上での火葬という行為自体への、心理的な抵抗感
許可や届出が不要なため、悪質な業者が参入しやすい

といった問題点が指摘されています。

2. 区外の施設への「遠征」

もう一つの選択肢は、専用の火葬施設を持つ、区外のペット霊園(川崎市や横浜市、千葉県など)まで、自ら亡骸を運んでいくことです。しかし、これは、

自家用車がなければ、移動手段の確保が困難
高齢の飼い主や、深い悲しみの中にいる飼い主にとって、心身ともに大きな負担
どの施設が信頼できるのか、情報が乏しく判断が難しい

といった課題を伴います。

愛する家族を失った悲しみの中で、さらに「どこで、どうやって見送るか」という問題で、飼い主は苦しまなければならない。これが、今の大田区の偽らざる現状なのです。

(第三章) 悲しみに付け込む、野放しの業界

人間の火葬事業が法律で厳しく規制されているのに対し、ペットの火葬・葬儀業界は明確な法律や規制がほとんどない、いわば「野放し」の状態です。
その結果、飼い主の深い悲しみに付け込むような心ない一部の悪質業者とのトラブルが後を絶ちません。

高額請求トラブル:
ホームページに記載された安い料金を見て依頼したら、火葬後に「骨壺代」「供養料」など、次々と追加料金を請求され、数十万円もの高額になるケース。

遺骨のトラブル:
「ちゃんと火葬した」と言いながら、遺骨を返してくれなかったり、他のペットの骨と混ぜられてしまったりする、信じがたいケース。

不適切な対応:
亡骸を乱暴に扱われたり、約束の時間に来なかったりと、飼い主の気持ちを踏みにじるような対応。

最愛のペットを亡くし、冷静な判断が難しい状態にある飼い主にとって、信頼できる業者を自力で見つけ出すのは、至難の業です。悲しみの淵で、さらに金銭的なトラブルや、不誠実な対応によって深く傷つけられる。そんな二重の苦しみを誰にも味わってほしくありません。

(第四章) 「ペットロス」と、心のケアの必要性

家族同然だったペットを失った時に生じる、深い悲しみや喪失感。これを「ペットロス」と呼びます。かつては「ペットくらいで…」と軽視されがちでしたが、今では、時に人間の家族を失った時と同じか、それ以上に深刻な心の状態に陥ることが、広く社会に認識されるようになりました。

このペットロスから立ち直る上で、「きちんと、納得のいく形で最期のお別れができた」という経験は、非常に重要な意味を持ちます。

煙や臭いを気にしながら路上で行われる火葬や、遠方への大変な移動、業者とのトラブルへの不安…。こうしたストレスは、飼い主の心に「あの子に、ちゃんとした最期を迎させてあげられなかった」という後悔や罪悪感を刻み付け、ペットロスをより重く、長引かせる原因になりかねません。

ペットの火葬問題は、単なる「亡骸の処理」の問題ではありません。それは、残された家族の「心のケア(グリーフケア)」に直結する、極めて重要な福祉の問題でもあるのです。

(第五章) 大田区がやるべきこと、できること

では、愛するペットとの穏やかな別れを、地域社会としてどう支えていけばいいのでしょうか。私は、大田区として、今すぐ取り組むべきことがあると考えています。

1. 行政による「正確な情報提供」と「注意喚起」

区が直接、火葬場を運営することは難しくても、区民が安心して天国へ送り出せる環境を整える手助けはできます。具体的には、区のホームページなどに、

近隣にある、信頼できるペット葬儀社のリスト(登録・推薦制など)を掲載する。
悪質な業者を見分けるためのチェックリストや、トラブル事例を公開し、注意を促す。
法律上の位置づけや、区の引き取りサービスについて、分かりやすく周知する。

といった、「情報のハブ」としての役割を果たすべきです。

2. 優良な事業者との連携

地域の動物病院やペットショップなどと連携し、信頼できる葬儀社の情報を、飼い主が早い段階で得られるようなネットワークを構築することも有効です。

3. 長期的な視点での施設整備の検討

将来的には、近隣自治体との広域連携による「公設民営」のペット火葬・斎場施設の設置も、検討のテーブルに乗せるべきです。採算性だけでなく、「区民の心の福祉」という観点から、この問題を捉え直す必要があります。

(まとめ) すべてのわんちゃん猫ちゃんのために

我が家の犬や猫たちを見ていると、彼らが私たちに与えてくれる無償の愛の、なんと大きく、温かいことかと感じます。この子たちが、その命の灯火を燃やし尽くす最期の瞬間まで、そして、その後の旅立ちまで、私たちが愛情と責任をもって見守るのは、飼い主としての当然の務めです。
ペットは家族です。

その最期のお別れは、法律上の「廃棄物処理」であってはなりません。感謝と尊厳に満ちた、「家族のセレモニー」であるべきです。
私、佐藤なおみは、一人の政治家として、そして同じ動物を愛する仲間として、この大田区が、すべての命に優しいまちであり続けるために、そして、すべての飼い主が、心穏やかに「ありがとう」を伝えられる社会を実現するために取り組んでいけたらと思います。

大田区議会議員 佐藤 なおみ

ご意見やご相談はこちら

佐藤なおみへのご意見やご相談はこちら

佐藤なおみへのお問い合わせ

 

関連記事

TOP